GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

2013-01-01から1年間の記事一覧

モンタナ・デュエリング・ダイナソーズ:延長戦

いまだきちんとした研究が行われていない「Montana Dueling Dinosaurs」だが、最も根本的な疑問がある。 果たしてこの2匹は、戦いの末に相討ちとなったのか? 研究途上なので何とも言えない部分が多いが、ひとつ大きな疑問が残る。 なぜ、ナノティラヌスだけ…

モンタナ・デュエリング・ダイナソーズ:後編

前回はナノティラヌスの話だったので、今度は角竜の方の話をしたい。 MDDの角竜の特筆すべき点として、全身が関節した状態であった点が挙げられる。関節した角竜の骨格、といえば科博のレイモンドを思い浮かべられる方も多いだろうが、レイモンドでは尾椎の…

モンタナ・デュエリング・ダイナソーズ:中編

(しれっと前回の続きなので気 に す る な !) ナノティラヌスと言えば、現在に至るまで「ティラノサウルスのジュニアシノニムとすべきか否か」で盛んに議論が行われているのは、恐らくご存じのとおりである(ついでに言うと筆者は別種論者であるというか…

モンタナ・デュエリング・ダイナソーズ:前編

http://www.nature.com/polopoly_fs/7.13826.1384897016!/image/1.14198_Bonhams_Dueling-dinosaurs.jpg_gen/derivatives/landscape_630/1.14198_Bonhams_Dueling-dinosaurs.jpg ↑産出状態を再現した模型。クリーニング初期の段階で製作されたものであり、角…

エル・ピカチョの角竜

↑「エル・ピカチョの角竜」TMM 42304-1とTMM 40814-6を白色で示す。スケールは1m さて、アメリカ・テキサス州にエル・ピカチョEl Picacho層という、白亜紀後期(マーストリヒチアン)の地層が存在する。ここからは、1960年代と1980年代に角竜の化石が発見さ…

リンク先追加

リンク先を追加しました。catappledogさんの恐竜の歯+α <<恐竜の歯牙解剖学>>になります。 専門家と見まごう密度の濃さは、すごいの一言に尽きます。定量的解析など、只者ではないブログとなっています。 歯牙形態について筆者は門外漢なので、とても参考に…

アルコヴェナトル

↑アルコヴェナトル・エスコタエArcovenator escotaeの頭骨復元図 発見部位を白色で示す。頭骨長は70㎝弱か つい先日、南フランス産のアベリサウルス類Aberisaurid、アルコヴェナトルが記載された。タラスコサウルスTarascosaurus(フランス産、カンパニアン…

エドモントサウルスのトサカ

http://phenomena.nationalgeographic.com/files/2013/12/Edmonotosaurus.jpg ↑エドモントサウルス・レガリスのミイラ化石(肩~後頭部) National Geographic Phenomenaより 矢印で「トサカ」を示す とんでもないものが見つかった。エドモントサウルス・レ…

アラモサウルス

原記載から90年以上が過ぎた今でも、アラモサウルス・サンジュアネンシスAlamosaurus sanjuanensisは北米唯一の派生的ティタノサウルス類として君臨している。最近の動向と合わせ、つらつらとこいつに関して書きたい。 さて、アラモサウルスの模式産地はニュ…

ラプトルの怪

さて、前記事の最後で前フリしていたのだが、今回は白亜紀末期のドロマエオサウルス類の話である。10年以上前の断片的な情報を繋ぎ合わせた話なので、正直言って眉唾に近いところがある。何かご存知の方がいらっしゃればコメントをぜひいただきたい。 「肉食…

アケロラプトル

↑アケロラプトルの骨格図 ROM 63777(ホロタイプ:上顎骨)とROM 63778(パラタイプ:歯骨)を白で示す 先日、初のヘル・クリーク産ドロマエオサウルス科獣脚類Dromaeosaurid(いわゆる“ラプトル”)が命名された。アケロラプトル・テメルティオルムAcherorap…

ヘル・クリークの“卵泥棒”

wikipediaより、“キロステノテス”の一種 "Chirostenotes" sp. の復元骨格 アメリカ・モンタナ州のヘル・クリークHell Creek層(マーストリヒチアン後期、6700~6600万年前)から新たに発見された大型のカエナグナトゥス科の獣脚類Caenagnathidのニュースがネ…

ティラノサウルスとナノティラヌス

幸か不幸か、結局「Montana Dueling Dinosaurs」は落札されなかった。これで博物館による落札→研究の道がそれなりに開けたわけである。ナノティラヌスの分類についての決定打となりうる化石だけに、きちんとした研究が望まれる。 というわけで(唐突)、ティ…

カスモサウルスの幼体

http://i.livescience.com/images/i/000/059/649/original/ceratopsid-skeleton.jpg?1385390659 livescienceより、カスモサウルスの一種Chasmosaurus sp.の幼体 さて、先日のSVP2013ではデイノケイルスの新標本が話題をさらったが、角竜についても新情報が出…

チンタオサウルスの新復元:確定情報

↑チンタオサウルス・スピノリヌスTsintaosaurus spinorhinusの頭骨復元図(産出部位をグレーで示してある)。IVPP V725(ホロタイプ)とV723、V829、K107からなる。Prieto-M?rquez, A. & Wagner, J. R. 2013より 先日こんな記事を書いたのだが、なんとも言え…

ジュディス・リバーの悪夢(後編)

↑ジュディス・リバー産のケラトプス科角竜の頭骨。発見部位を白で示す。前編の図を修正したもの さて、つい最近になってほぼ完全なアヴァケラトプス(の亜成体?)の骨格が発見され、鼻角が存在しないことが明らかになった。また、ナストケラトプスNasutocer…

ひたすら恐竜本をオススメしていくコーナー

ジュディケラトプスの資料がまるで集まらない(2度目)ので、またまた「ジュディス・リバーの悪夢 後編」はお休み。せっかくなので、手持ちの恐竜本の中から順不同でオススメしていきたい。絶版が多いのは 気 に す る な ! 「恐竜学最前線①~⑬」(絶版) …

トリケラトプスの近況

ジュディケラトプスの資料探しがおっつかなかったりプラモデル作ってたりしたので「ジュディス・リバーの悪夢 後編」は今回はお休み。かわりと言ってはアレだが、最近色々あったトリケラトプスについて、いくつか書き記しておきたい。この辺の話題については…

ジュディス・リバーの悪夢(中編)

↑福井県立恐竜博物館に展示されている「アルバータケラトプス・ネスモイ」 前回を読まないとイミフ(読んでもイミフかもしれない・・・)なので注意すべし。 時は流れて2001年。カナダ・アルバータ州のメニーベリーズ、オールドマンOldman層から、奇妙な角竜…

ジュディス・リバーの悪夢(前編)

アメリカのモンタナ州は、良質な恐竜の化石を多数産出することで知られている。様々な年代の地層から恐竜化石が発見されているが、中でも古くから発掘が行われてきたのがジュディス・リバーJudith River層である。白亜紀後期、カンパニアンの中頃―――カンパニ…

ティラノサウルス科のみなさま

先日リスロナクス(ライスロナクス)Lythronaxも記載されたことであるし、一念発起(というほど気合は入っていない)してティラノサウルス科Tyrannosauridaeの恐竜を一気に描いてみた。(T."x"も一応描いてはみたが、正直T.レックスと分けることはない気もす…

大恐竜展のレポらしきもの 延長戦

3部構成のつもりが全然おさまらなかったんだZE☆(乱心)というわけで、延長戦行ってみよう! 骨せんべいのように見えるが、プロトケラトプスの幼体の集団化石である。15匹生き埋めという壮絶な化石だが、ぜひ実物を見に行くべき。 今回の目玉の一つ、タルボ…

大恐竜展のレポらしきもの 後編

世間(?)がSVPとリスロナクスLythronaxの記載関連で騒がしくなってきたところではあるが、とりあえず大恐竜展レポもどき後編。 サイカニアSaichaniaの模式頭骨(のキャスト)+未同定のアンキロサウルス類(一応cf.ピナコサウルスPinacosaurusにするとかし…

大恐竜展のレポらしきもの 中編

パソコンくんがユーザープロファイルを読み込まなくなってひやひやしたけどなんとかなったぜ!というわけで中編にGO! ヴェロキラプトルVelociraptorの腹部(右側面)。配列が多少崩れてはいるが腹骨がちゃんと残っている。 写真中央(より気持ち右上)に筒…

大恐竜展のレポらしきもの 前編

金曜日は講義がなかったぜ!というわけで、科博で26日から開催されている大恐竜展 ゴビ砂漠の驚異に行ってきた。せっかくなので、レポート(というか写真にコメントするだけ)してみたい。 初っ端からこういう化石を繰り出してくるあたり、科博と林原の本気…

恐竜王国2012始末記後編 フアシアオサウルスとズケンゴサウルス

シャントゥンゴサウルスの復元骨格 ウィキペディアより 恐竜王国2012の目玉の一つ(二つ?)だったのがフアシアオサウルスHuaxiaosaurus aigahtensとズケンゴサウルスZhuchengosaurus maximusである。鳴り物入りで宣伝されていた両者であるが、研究者の間で…

恐竜王国2012始末記前編 シノケラトプス

↑シノケラトプスの骨格復元図。鼻骨~後眼窩骨にかけてと頭頂骨は模式標本ZCDM V0010、鱗状骨と縁鱗状骨、その他細部はZCDM V0011に基づく。発見部位を白で示す 昨年(2012年)の夏に幕張で「恐竜王国2012」が開催された(そしてコケた挙句に汎企画21が潰れ…

ユタのトロサウルス

↑“トロサウルス”・ユタエンシスの頭骨復元図。発見部位を白で示す 1935年にアメリカ・ユタ州のノース・ホーンNorth Horn層で発見された角竜の化石は、1946年にアリノケラトプスArrhinoceratops属の新種(模式種A.ブラキオプスbrachyopsはカナダ産)、A. ユタ…

ブラヴォケラトプス

↑ブラヴォケラトプス・ポリフェムス 模式標本TMM46015-1 産出部位を白で示す 近年の記載ラッシュで大きく種数を増やしたケラトプス科であるが、今回は最も新しく命名(2013年6月論文発表)されたブラヴォケラトプス・ポリフェムスBravoceratops polyphemusに…

アガタウマス

Agathaumas sylvestris 模式標本AMNH 4000(ウィキペディアより、Hatcher et al., 1907の図) 初期の角竜の研究と言えば、マーシュとゆかいな仲間たち(ハッチャーとラル)が思い起こされるが、何だかんだで最初の角竜を記載したのはコープの方だったりする…