GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

モンタナ・デュエリング・ダイナソーズ:後編

前回はナノティラヌスの話だったので、今度は角竜の方の話をしたい。

 MDDの角竜の特筆すべき点として、全身が関節した状態であった点が挙げられる。関節した角竜の骨格、といえば科博のレイモンドを思い浮かべられる方も多いだろうが、レイモンドでは尾椎の大半が失われ、頭骨もばらけた状態で発見されている。
 それに対し、MDDの角竜では尾の先まで関節しているという驚異的な状態であった。特筆すべきは完全な(先端の1つくらいは欠けているかもしれないが)尾椎が保存されていたことで、これはカスモサウルス類ではわずかに2例目である。(今まで知られていたのは、“アンキケラトプスAnchiceratops”ことカスモサウルス類の未確定種CMN 8547ただ1つであった)
 また、MDDの角竜では皮膚痕も確認された。体部(腰のあたりだとかなんとか)とフリル(!)でウロコのあとが発見されている。(この辺については以前紹介したとおりである)

 ところで、ヘル・クリーク層の角竜と言えば、トリケラトプス・ホリドゥスとトリケラトプス・プロルスス、そしてトロサウルス・ラトゥスに加えて最近タタンカケラトプス・サクリソノルムTatankaceratops sacrisonorumという新種が加わった。(ただし、トロサウルスのシノニム話に加えて、タタンカケラトプスをT.プロルススのシノニムにしようという話もあったりする)

 これらの角竜のうち、産出量が最も多いのがT.ホリドゥスである。では、MDDの片割れの角竜は一体どの種に属するのだろう。

 結論から言ってしまえば、「わからない」というのが正直なところである。

イメージ 1


↑MDDの「未記載のカスモサウルス類」の頭骨(歯は省略した) スケールはおよそ1m (※画像を以前のものと差し替えたので注意。ややフリルが長くなった)

 発掘当初、MDD角竜の頭骨は風化の進んだ右側面のみが観察できる状態であり、その解剖学的特徴については不明な点が多かった。とりあえず、きちんとした鼻角が確認できないこと、上眼窩角も存在しなさそうだということで、どことなくヴァガケラトプスVagaceratopsに似た頭骨の持ち主とされた。そのような形態の持ち主はこの時代(白亜紀末期、マーストリヒチアン 6700~6600万年前)にはいないということで、とりあえず新種のカスモサウルス類ではないかと考えられた。また、座骨がカーブしていないという特徴も、この可能性を支持した。

 が、クリーニングが進むにつれ、意外な(というよりは落ち着くところに落ち着いたというべきか)事実が明らかになった。

 ジャケットの中から姿を現したのは、トリケラトプスによく似た角竜の頭骨(上図)であった。

 全体として頭骨要素の癒合はよく進んでいるように見え、成体(かなり年取っているようにも見える)なのは間違いない。
 「窓」の(おそらく)ないフリル、そして低く小さな鼻角など、全体的な頭骨の特徴はT.ホリドゥスの一般的な特徴と同じである。しかし一方で、発達した「涙骨の角」(眼窩の前方の突起がお分かりいただけるだろうか)、「前上顎骨の2つ目の窓」など、T.ホリドゥスとは差異も見られる。
 また、先述の座骨(腰の骨なので当然図示していない)がカーブしない(先端が欠けているだけのような気もするが…)という、カスモサウルス類では稀な特徴も存在する。

 上眼窩角については、パキリノサウルスPachyrhinosaurusのこぶのようなものである可能性が考えられる。上眼窩角の表面にはしわ状の構造が見て取れるが、パキリノサウルスのこぶ表面のしわというよりは、治癒した骨折の痕ないし感染症の痕というふうにも見える。
 右の上眼窩角が風化して消失していた以上深入りはできないが、左の上眼窩角を生前に失っていたのかもしれない。
 また、風化が進んでいるのでアレだが、「前上顎骨の2つ目の窓」は頭骨の右側には存在しないように見える。これも単に怪我か何かの痕かもしれない。
 先述の「涙骨の角」は、トリケラトプスの中でも、個体によってはかなり発達したものも見られる。正直なところ、分類に使える特徴かは判断しかねる。
 
 (現段階で確認できる特徴として)残るはカーブしない座骨である。ケラトプス科では座骨が下方にカーブするのが一般的である。程度の差はあれ、基本的に全ての種で下方にカーブしているのだ(ただし、ユタケラトプスUtahceratopsではほぼ直線的なようだが…)。
 これに対し、MDD角竜では(写真と報告のかぎりでは)非常に直線的な座骨をもつようである。ただ、いかんせんクリーニングの途中であったりもするので、具体的な情報には乏しい。トリケラトプスの座骨も、個体によって(保存状態によって、ということかもしれない)カーブの度合いに差がある。そのあたり、きちんと比較しないと何とも言えないだろう。
 
 相変わらずまとまりのない文章で申し訳ないが、要するにMDDの角竜が新種のカスモサウルス類かどうかは微妙なところである。トリケラトプス・ホリドゥスの一個体に過ぎない可能性も十分考えられる。
 いずれにせよ、カスモサウルス亜科の中のトリケラトプス族Triceratopsini(角竜のラストを締めくくる、進化型のグループ。トリケラトプストロサウルスのほか、オホケラトプスOjoceratopsやエオトリケラトプスEotriceratopsなどが含まれる)に属するのは間違いないだろう。

 MDDの角竜が何であるにせよ、極めて重要な標本であることに間違いはない。きちんとした記載の暁には、トリケラトプス族角竜の体骨格の詳細が明らかになるはずである。


やっぱり3部構成では収まらなかったよ…というわけで、延長戦に続く!