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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

アルコヴェナトル

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↑アルコヴェナトル・エスコタエArcovenator escotaeの頭骨復元図
 発見部位を白色で示す。頭骨長は70㎝弱か

 つい先日、南フランス産のアベリサウルス類Aberisaurid、アルコヴェナトルが記載された。タラスコサウルスTarascosaurus(フランス産、カンパニアン中期)、ベタスクスBetasuchus(オランダ産、マーストリヒチアン後期)など、今までもアベリサウルス類と思しき化石がヨーロッパから見つかっていたが、疑いなくアベリサウルス類とされたのはこれが初めてである。
 Argiles Rutilantes層下部(カンパニアン後期)から、1個体に属する部分的な頭骨(上図)と胴椎、脛骨等が知られている。マジュンガサウルス亜科Majungasaurinaeに属するようで、南米(カルノタウルス亜科Carnotaurinaeが支配的)からではなく、マダガスカル―インド(マジュンガサウルス亜科が支配的)から移住してきたらしい。
(頭骨のはっきりした大きさが分からなかったので確実なことは言えないが、脛骨の長さが51cmとのことなので、プロポーションもマジュンガサウルスに似ていたようだ)


 (白亜紀後期の)ヨーロッパでは、アルコヴェナトルのほか、アンペロサウルスAmpelosaurus(フランス産、マーストリヒチアン前期)やラブドドンRhabdodon(フランス・スペイン産、マーストリヒチアン前期)といった、ゴンドワナ起源(ラブドドンは微妙だが)の恐竜が知られている。
 そうかと思えば、アイカケラトプスAjkaceratops(ハンガリー産、サントニアン)やテルマトサウルスTelmatosaurus(ルーマニア産、マーストリヒチアン前期)、テティスハドロスTethyshadros(イタリア産、マーストリヒチアン前期)といった、ローラシアに典型的な恐竜も見つかるのだ。

 以前から散々言われていたことではあるが、白亜紀後期のヨーロッパは多島海に近い環境だったらしい。それゆえ、このあたりからさほど大きな恐竜は産出しない(ティタノサウルス類ですら20mに届かない)。挙句にゴンドワナの恐竜が流入しているのがヨーロッパである。

 どうやら、バラエティに富んだユニークな恐竜相が白亜紀後期のヨーロッパで見られたようである。