GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

トリケラトプスの近況

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 ジュディケラトプスの資料探しがおっつかなかったりプラモデル作ってたりしたので「ジュディス・リバーの悪夢 後編」は今回はお休み。かわりと言ってはアレだが、最近色々あったトリケラトプスについて、いくつか書き記しておきたい。この辺の話題については、そのうち詳しく書きたいところである。

トリケラトプストロサウルスはやっぱり別属の可能性大
 まずはこれである。ちょっと前にネット界隈を騒然とさせた、「トリケラトプスの学名が教科書から消える!?」という話。これは完全にギズモードだかどっかの人がアレだっただけだが(ホーナーも、「消えるのはトロサウルスだから!」と散々言う羽目になった)、長年にわたって別属とされてきたトロサウルスが、トリケラのジュニアシノニムになるという話は学会にも衝撃を与えた。

 どうしても報道というのは「その後」については弱い。この騒ぎは「やっぱりトリケラとトロは別でいんじゃね?」というところに収束したようである。
 最初にホーナーとスキャネラが論文を出して(2010年)以降、同属派と別属派の間で幾度も論文の応酬となった。最終的に昨年(2012年)の冬に「やっぱり別属」という論文が出て以降、同属派は反論を出していない。恐竜がその成長段階に応じて大きく姿を変えたというのは古生物学者の共通認識となっているが、具体的な話となるとどうしても混乱するのが現状ではある。


トリケラトプスのボーンベッド
 トリケラトプスと言えば、ケラトプス科の中でも記載されたのは最古参の部類に入る。ケラトプス科角竜のかなりの属(スピノプスSpinops、セントロサウルス、スティラコサウルス、ルベオサウルスRubeosaurus、エイニオサウルス、アケロウサウルス、パキリノサウルス、メデューサケラトプス、アグヤケラトプスAgujaceratops、ユタケラトプスUtahceratops、アンキケラトプス、トロサウルスなど)でボーンベッドの存在が知られているが、トリケラトプスに関してはいずれの化石も単独個体でしか見つかっていなかった。

 最近(2007年)になって、初めてトリケラトプス(ホリドゥス)のボーンベッドが見つかった。亜成体のみ3個体からなるボーンベッドである。また、今年(2013年)になって、亜成体(?)2体と幼体1体からなるボーンベッドも新たに発見された。ボーンベッドが知られていないことから「孤独性」の可能性も指摘されていたトリケラトプスだが、少なくとも生涯のある時期、少数であれ群れを作ったことは確かなようだ。


トリケラトプスのミイラ化石
 恐竜のミイラ化石というと、軟組織が化石化したものと、単に広範囲に皮膚痕が残っていたものの二種がある。Laneと名付けられ、ヒューストン自然科学博物館に送られたトリケラトプス・ホリドゥスの場合は後者だった。

 皮膚痕は主に胴体部分のものらしく、「短冊状の大きなウロコが並んだもの(腹面?)」と「モザイクタイル状の大きなウロコ(背面?)」が特徴的である。「モザイクタイル状のウロコ」には、突起(ただのトゲか、あるいは羽毛に近い代物かもしれない」の折れたような跡もあり、今後の研究が期待される。Laneの骨格自体も非常に良好なものであり(76%完全―――BHI式カウント?)、皮膚痕と合わせて研究に期待したい。


 ここ何年か、水面下で(というわけでもないが、日本ではなぜかほとんど話を聞かなかった)進んでいた話である。ナノティラヌス(を有効とするかはともかく)と、トリケラトプスに似た角竜(新種の可能性アリ)が関節がつながったまま、共産したというとんでもない化石である。色々と大人の事情があったらしく、11月19日(ってもうすぐやん!)にオークションにかけられる。
 これに関してはそのうちちゃんと書きたい。ここで問題なのは、この角竜には完全な尾が残っていたこと、そして皮膚痕もあったことである。

 以前公式サイトにあった写真が消されたりしてうろ覚えで申し訳ないのだが、尾椎は39個±1個くらいだった(はず)。尾の相対的な長さ自体は、“アンキケラトプス”ほど短くはない。セントロサウルスよりは短いようだが、ものすごく短いわけではないところに注意が必要である。菊谷詩子さんによるトリケラトプスの骨格図のイメージで間違いないと思われる。

 皮膚痕については、背面とフリルの一部に確認されたようだ。フリル―――ひいては頭部―――の皮膚痕というのは角竜で初めてである。最近ホーナーらによる「顔面ケラチン」説(松村しのぶさんや山本聖士さんの復元と言ってもいいだろう)が話題になるが、別にそうでもなかったようだ。写真の画質がいまいちだったりで確認しにくかったが、とりあえず「大きなウロコ」があったらしい。

 あとはこれに成長段階に伴う形態変化の話と「藤原復元」の話を合わせれば、だいたいトリケラトプスに関する最近のトレンドは押さえたと言えるだろうか。古くから親しまれてきた有名どころの恐竜とはいっても、まだまだ分からないことだらけである。