幸か不幸か、結局「Montana Dueling Dinosaurs」は落札されなかった。これで博物館による落札→研究の道がそれなりに開けたわけである。ナノティラヌスの分類についての決定打となりうる化石だけに、きちんとした研究が望まれる。
というわけで(唐突)、ティラノサウルスとナノティラヌスの頭骨を、成長段階ごとに並べてみた。ナノティラヌスとの比較用に、ティラノサウルスの幼体に見立ててダスプレトサウルスとタルボサウルスの頭骨も加えてある。(タルボサウルスの頭骨は様々な成長段階のものが含まれており、サイズ的にナノティラヌスと直接比較しうるものもありそうだが、いかんせんきちんとした資料に乏しいので、例の林原標本だけにとどめた)
↑頭骨を同じ長さに揃えたもの(よって縮尺は不同)
(ナノティラヌスを除いた)ティラノサウルスでは上顎骨歯:11~13本、歯骨(下顎)歯が12~14本とされている。これに対し、ナノティラヌスでは上顎骨歯が15~16本、歯骨歯が17本である。
成長によって歯の数が減少していく可能性は以前から指摘されていたが、実際には個体差による可能性が否定できないようである。また、タルボサウルス(ご存じティラノサウルスとごく近縁)においては、成体と幼体において有意な歯の数の違いは見られなかった。
もう一つの両者を分ける重要な違い(と別属論者が主張しているもの)は、方形頬骨にみられる「窓」である。ティラノサウルスやタルボサウルス、ダスプレトサウルスにはみられないが、ナノティラヌス(とゴルゴサウルスの一種―――TCM 2001.89.1)にはこれが存在する。成長段階によって消失するわけではないようだ(タルボサウルスMPC-D 107/7参照)。
あくまで非公式な情報(写真を見たがうっかり保存し忘れた)だが、「Montana Dueling Dinosaurs」のナノティラヌスの前肢は、ティラノサウルス(WYREX)とは明確に長さが異なる(相対的により下腕と中手骨が長い)。
「Montana Dueling Dinosaurs」の記載が行われれば、ティラノサウルスとナノティラヌスの問題も決着を見るだろう。