化石はいずれも断片的である。しかし、その中にいくつか重要な標本が存在する。これらの標本はひとまず同じ分類群に属するとされ、「エル・ピカチョの角竜」と暫定的に呼ばれている。
脳函や鱗状骨(フリル)、鼻骨、上腕骨、肋骨を含む標本(TMM 42304-1)や、大きな縁頬骨(TMM 40814-6)、その他2標本が発見されている。特筆すべきは鼻骨であり、トリケラトプス・“オブトゥススobtusus”やネドケラトプスNedoceratopsのように、鼻角らしきものが存在しない。
いかんせん鼻骨が残っている標本が一つしかなく、これが属・種としての特徴なのか病変なのか確かめるすべはない。もし属・種としての特徴ならば、「エル・ピカチョの角竜」はまぎれもない新属(and/or)新種である。
ところで、最近テキサスのジャヴェリナ層(マーストリヒチアン前期→エル・ピカチョ層と同年代か?)から記載されたブラヴォケラトプスだが、鱗状骨の形態がよく似ているように思われる。また、「(上から見て)幅の狭い鼻骨」や「大きな縁頬骨」なども共通する特徴らしい。
もしも「エル・ピカチョの角竜」の鼻角が病変によるものだとすれば、ひょっとするとブラヴォケラトプスそのものの可能性がある。そうでなかったとしても、かなり密接な関係にあったのではないだろうか。