↑シノケラトプスの骨格復元図。鼻骨~後眼窩骨にかけてと頭頂骨は模式標本ZCDM V0010、鱗状骨と縁鱗状骨、その他細部はZCDM V0011に基づく。発見部位を白で示す
昨年(2012年)の夏に幕張で「恐竜王国2012」が開催された(そしてコケた挙句に汎企画21が潰れた)ことは記憶に新しいかと思う。個人的に諸城のボーンベッドについて注目していただけに、色々と展示に関して言いたいこともあったりするのだが、愚痴っぽくなるのでやめておく。
今回は恐竜王国2012にて日本初公開(その前年の時点で中国では展示されていた)となったシノケラトプス・ズケンゲンシスSinoceratops zhuchengensisについてつらつらと書き綴っていこうと思う。
シノケラトプスが発見されたのは、中国・山東省は諸城市、王氏Wangshi層群(のXingezhuang層(漢字不詳))である。正確な年代ははっきりしていない(カンパニアン中期~マーストリヒチアン中期と幅がある)のだが、一応、7350万年前とされている。
同じ地層からはズケンティラヌスZhuchengtyrannusやシャントゥンゴサウルスShantungosaurus(ズケンゴサウルスZhuchengosaurusとフアシアオサウルスHuaxiaosaurusはほぼ確実にこいつのシノニムである)、ズケンケラトプスZhuchengceratops、未命名のティタノサウルス類やアンキロサウルス類などが知られている。
さて、展示スペースの影響(なのか?)でやたら背中をひん曲げていたシノケラトプスの復元骨格だが、実は明確に2タイプ存在する。
最初に復元された骨格(タイプ1)では、模式標本ZCDM V0010(部分的な頭骨;恐竜王国2012において実物が展示された)のキャストを、トリケラトプス・プロルススの復元骨格(おそらくは群馬県立自然史博物館に展示されているGMNH-PV 124の“リメイク版”キャスト―――恐竜王国2012で展示されていた復元骨格)に埋め込んで作ってある。ゆえに、タイプ1では中国製の復元骨格にありがちな支持フレームが存在しない。
その後、おそらくは断片的な体骨格の発見を踏まえ、それらを組み込む形でタイプ2が作られた。恐竜王国2012で展示されたのはタイプ2の方である。ただし、タイプ2の頭蓋はタイプ1の流用である。
ゆえに、外鼻孔やら吻の形態がかなり不可思議なものとなっている。頬骨周辺の復元も意味不明である。
さて、シノケラトプスの記載論文では、模式標本の他に、ZCDM V0011(部分的な頭骨)とZCDM V0012(部分的な脳函、図示なし)が記載されている。模式標本とV0011を合わせれば、頭骨のかなりの部分が復元できる…が、まともな復元図は“予察的な復元”のものしか存在しない。色々な資料をかき集めて筆者なりに描いてみたものが上の図である(ゆえに信憑性に自信はない)。
前方にカールした縁頭頂骨と、斜め後方にスパイク状に突き出した縁鱗状骨が特徴的である。また、フリル表面や鼻角の周辺にはこぶ状の突起が発達している。また、ケラトプス科としては原始的な特徴もみられるようだ。
記載論文中の系統解析では暫定的にセントロサウルス亜科の最も原始的な位置づけとされたが、他の角竜の系統解析の中で原始的なパキリノサウルス族として扱われるようになり、最新の分岐図(シノケラトプスの生息年代をうっかり百万年ずらしちゃっているのはご愛嬌)ではクセノケラトプスの姉妹群として、パキリノサウルス族の基底に位置づけられている。
ところで、図を描き終わってから1つ気がかりなことが。先述の最新の分岐図が載った論文(Sampson et al., 2013http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/280/1766/20131186)のサプリメントに、系統解析に用いた標本等の一覧が出ている。シノケラトプスについては「ZCDM V0010, 0012, various other ZCDM specimens 」と書いてある。…あれ、ZCDM V0011は……?(滝汗)
(上の図にある「スパイク状の縁鱗状骨」と鱗状骨の形態はV0011に基づいている)