GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

フクイティタン

イメージ 1
↑フクイティタン・ニッポネンシスの骨格図。
図示した以外に歯や部分的な頸椎1つ、座骨や足の末節骨も知られている。
スケールは1m
Skeletal reconstruction of Fukuititan nipponensis FPDM-V8468(holotype).
Tooth, cervical neural arch, fused ischia, pedal ungual also recovered.
Scale bar is 1m.

 突貫工事でスライドを3枚追加したせいか、ゼミ発表は割と評判がよかったので一安心の筆者である。 懸案事項もだいたい片付いたと思っていたのか?byブロリーので、ここらでブログも平常運転に戻したい。

 さて、フクイラプトルの資料を探していたときに、たまたまフクイティタンの記載論文も入手したわけである。せっかくなので、紹介したいと思う。

 ご存知の方がほとんどだろうが、フクイティタンは「福井初」の竜脚類化石ではない。1989年からおこなわれた第一次調査で、すでに複数の竜脚類の歯化石が採集されていた。
 当初、竜脚類の歯化石は3種に区別された。―――カマラサウルス科の“スギヤマリュウ”と、そうでないもの2種である。
 やがて、“スギヤマリュウ”は、同じサイトから見つかった他の歯の多くと共にブラキオサウルス科へと移された(初めにスギヤマリュウとは別種とされた標本がどう位置付けられたのか、筆者は寡聞にして知らない)。しかし、結局一次調査では竜脚類の体骨格は見つからずじまいだった。

 第二次調査でも体骨格は見つからず、その後しばらくは“スギヤマリュウ”を含む福井産竜脚類は謎のままだった。事態が動いたのは三次調査(の準備)、すなわち2007年になってからである。

 第一次・第二次調査のサイトより12mほど上位の地層から姿を現したのは、150平方メートルほどの範囲に散らばった竜脚類の体骨格と3本の歯だった。体骨格は部分的に関節した状態であり、歯も含めて同一個体であると判断された。その後、かなりハイペースで研究が進み、フクイティタンとして記載されたのである。

 模式標本は部分的な骨格に過ぎないのだが、それでも四肢がほぼそろっているのはありがたい。歯も出ているので、比較するのに何かと便利である。骨格の特徴はボレアロサウルスBorealosaurusやドンヤンゴサウルスDongyangosaurusと似ているというのだが、いかんせん両者とも部分的であり、フクイティタンの姿を想像する上ではあまり役に立たない。
 そういうこともあって、系統的位置はいまいち定まっていない(というか、系統解析がほとんど行われていない)。とはいえ、最近おこなわれた系統解析では、エウへロプスEuhelopusやダシアティタンDaxiatitan、プウィアンゴサウルスPhuwiangosaurusやキャオワンロンQiaowanlongと近縁とされている。このあたりから考えるに、タンバティタニスとも近縁なのかもしれない。ボレアロサウルスやドンヤンゴサウルス、ヨンジンロンYongjinglongなどの系統的位置を考える上でも何か鍵になりそうである。

 ―――結局、“スギヤマリュウ”とはなんだったのだろう?

 筆者は歯の形態何それおいしいの?な人なので正直なんとも言えないのだが、実のところ“スギヤマリュウ”の歯とフクイティタンのそれとでは、明確に区別できないようにも思える。
 結局のところ、“スギヤマリュウ”の正体ははっきりしない。ただ、酒を飲んだ筆者の目では、フクイティタンの記載論文中に“スギヤマリュウ”の記述を見つけることはできなかった。