↑ヘル・クリーク層のアルヴァレズサウルス類UCMP 154584
スケールは1m
Hell Creek Alvarezsaur UCMP 154584. Scale bar is 1m.
Based on Hutchinson and Chiappe(1998), Headden(2009), and Paul(2010).
ランス期の北米の中~小型獣脚類と言えば、去年あたりからようやく記載運(?)が巡ってきた。これで「ヘル・クリークのドロマエオサウルス類(ヴェロキラプトルやらサウロルニトレステスとされていた連中を含む)」と「ヘル・クリークのオヴィラプトロサウルス類」は一安心なのだが、まだまだ未命名の子もいるわけである。
ランス期の北米にアルヴァレズサウルス類が暮らしていたことはあまり知られていない。コロラドのデンヴァーDenver層から“オルニトミムス”・ミヌトゥス"Ornithomimus" minutusと命名された部分的な第Ⅱ~Ⅳ中足骨(YPM 1049)、モンタナのヘル・クリーク層から部分的な腰帯(上の図)や尾椎、中足骨が発見されており、白亜紀末期の北米に、少なくとも1種のアルヴァレズサウルス類が暮らしていたのは確かである。
(ところで、"O". ミヌトゥスの「コタイプcotype(=シンタイプ/パラタイプ)」はYPM 1049(原記載では「Ceratops beds of Wyoming(=ランス層)」産とされている)だが、恐ろしいことに1920年の時点で行方不明になっている。YPM 1049は1887年にスミソニアンへ送られたらしいのだが、スミソニアンには1920年の時点でYPM 1049らしい標本は残っていなかった。Ornithomimus minutusのラベルを貼られた標本(USNM 2909)はあるにはあったが、色々な理由からYPM 1049とは別の標本であるとされた。ちなみに、USNM 2909にはランス層産であることを示唆するラベルが貼られていた。
原記載で「Ceratops beds of Wyoming」産と書かれていたにも関わらず、Gilmore(1920)はなぜかYPM 1049の産地を「?」付きでデンヴァー層(コロラド)とした。最近でも文献によってYPM 1049の産地はランス層だったりデンヴァー層だったりと混乱しており、いろいろ面倒な状況である。YPM 1049をアヴィミムス類とする意見もあるにはある)
これらランス期のアルヴァレズサウルス類が同じ種に属するのか、現状では判断のしようがない。ただ、YPM 1049とUCMP 154584は系統解析によってはアルバートニクスAlbertonykusと姉妹群になり、「北アメリカ型」の派生的なアルヴァレズサウルス類の一群がいた可能性を示している。YPM 1049はともかくUCMP 154584は独自の特徴らしいもの(座骨が退縮している)をもっており、今後の発見次第ではランス期のアルヴァレズサウルス類がまとめて新種になるかもしれない。