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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

試作型ティラノサウルス科(?)

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↑シオングアンロンの模式標本FRDC-GS JB16-2-1 他に第11、12胴椎も発見されている。スケールは1m

 さて(唐突)、賢明な読者の皆様はとっくにお気付きであろう。筆者は中途半端なティラノサウルス類が大好きである。ドリプトサウルス愛は以前書いたとおりであるが、アレクトロサウルス(の参照標本)やアパラチオサウルスあたりも大好物である。もちろん、ステータスがいまいち定まらないアリオラムス族の連中も好きである。
 そんなわけで、今回は「中間型」のティラノサウルス類で骨格のよくわかっているシオングアンロン・バイモエンシスXiongguanlong baimoensis(gがやたら多いなオイ)について紹介したい。

 中国は甘粛省、マゾンシャン(漢字変換がめんどくさいのでカタカナ表記に逃げる男)と言えば、中国-日本シルクロード調査隊が90年代におこなった、CCDP(中国‐カナダ恐竜プロジェクト)の補完調査で有名である(断言)。アーケオケラトプスと言えばピンとくるだろう。
 さて、近年マゾンシャンなどで新たな調査がおこなわれ、いくつかの興味深い恐竜化石が発掘された。そのうちのひとつがシオングアンロンである。

 シオングアンロンの年代は大ざっぱに1億2500万年前~1億年前の“いつか”とされている。年代的にはディロング(どうでもいいが、筆者はGuanlongはグアンロンと読み、Dilongはディロングと読みたい人である。ただ単に語呂の問題である)やユティラヌスと、アレクトロサウルスやアパラチオサウルスなどとの間に位置すると思われる(厳密に言えばディロングやユティラヌスの年代は1億2400万~1億2200万年前ごろとなる。とはいえ、シオングアンロンがこれらより新しい時代の恐竜であることはほぼ確実なようだ)。ティラノサウルス科とはかけ離れた外見であるディロングやユティラヌスと、素人目にはティラノサウルス科にしか見えないアレクトロサウルスやアパラチオサウルスとの間に位置する本種は、それらの中間的な特徴をもつ。

 とは言っても上に示したとおり、(筆者の目には)かなりティラノサウルス科的なプロポーションに見える。頭骨がやたら細長く見える(もっとも、化石の吻はかなり押し潰されているように見える)が、これはどうも二次的な適応によるものらしい。Loewenらによる直近の系統解析ではなんとアレクトロサウルスと姉妹群になっており、ドリプトサウルスよりも(そしてラプトレックスよりも!)派生的だったりする。
 これが確かなら(もっとも保証はないし、アレクトロサウルスとここまで近縁かといえば、多分そうではない)、機能指が2本しかない前肢と、アルクトメタターサルな後肢をもつということになる。要するに、顔がひょろ長いだけのほぼティラノサウルス科になる。それが1億年以上前に存在していたというのだ。

 肝心の前肢は肩帯ごと失われ、後肢も膝から下は残っていない。実際のところ前肢や後肢の様相は(科学的に)想像するしかないのが現状である。とはいえ、本種が(前肢はさておき)かなりティラノサウルス科に近いプロポーションをしていたのは確からしい。ティラノサウルス科の「試作型」とでもいうべきティラノサウルス上科の恐竜が、1億年以上前にはすでに出現していたようだ。

■追記■
ひろさんのブログにてタイアップ記事を書いていただきました。貴重な写真ぞろいでとても参考になります。ざっと見た感じ骨格図は問題ない……か?