GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

ティタノケラトプス、あるいはただのペンタケラトプス

イメージ 1
↑OMNH 10165の骨格復元図。上が「有効なトリケラトプス族の角竜として」復元したもの、下は「ペンタケラトプスとして」復元したものである。椎骨や肋骨も複数知られているが割愛した。

 ティタノケラトプス・オウラノスTitanoceratops ouranosと言えば、最近命名された角竜(やたら多いんだこれがまた)の一種である。トリケラトプス並みに大きな角竜であり、それなりに知名度もあるだろう(迫真)。

 さて、ティタノケラトプスと言えば、その学名の有効性に疑問符が付いていることをご存知の方も多いだろう。ティタノケラトプスというかペンタケラトプスというか、とにかくOMNH 10165について、適当に書いていきたい。

 事の発端は1941年の7月にさかのぼる。ワン・ラングストンJr率いる調査隊は、ニューメキシコのサン・フアン盆地にて巨大な角竜の化石を発見した。体骨格はばらけていたが、頭蓋骨と下顎は関節した状態で残されていた。採集された化石はジャケットに包まれたまま、なぜか1995年までオクラホマ大の収蔵庫に眠り続けた。

 1995年になって、OMNHに展示すべく、本標本のクリーニングがようやく始まった。ジャケットを開いて姿を現したのは、とんでもなく巨大な角竜の化石であった。フリルの大部分(と顔の左側面)以外ほぼ完全な頭蓋骨と下顎の大部分、四肢の大部分、いくつかの椎骨と肋骨がクリーニングで姿を現し、OMNH 10165は98年になってようやく記載された(そして復元骨格も製作された)。

 最初の記載の際、OMNH 10165はペンタケラトプス・スターンバーギPentaceratops sternbergiとされた。サン・フアン盆地(のフルーツランドFruitland層上部~カートランドKirtland層下部のハンター・ウォッシュHunter Wash部層)から知られていた角竜はペンタケラトプスしかおらず、発見された部位は既知のペンタケラトプスの標本とおおむね似ていたのである。
 吻は既知のペンタケラトプスよりも相対的に長く、鼻角の形もやや異なっていたのが、これらは個体差によるものと考えられた。また、OMNH 10165の体骨格にはペンタケラトプス(とされている首なしのほぼ完全な骨格)よりもトリケラトプスに似ている部分も見られたが、これはOMNH 10165の体サイズがトリケラトプス並みであることに起因するとされた。
(首なしのほぼ完全な骨格PMU R268の推定全長は5.2mほどと思われるが、(ペンタ型として復元した場合)OMNH 10165は6.4~6.8mほどと考えられる。)

 欠けていたフリルを「ペンタケラトプス型」として復元し、OMNH 10165の組立骨格が製作された。骨格には純骨が組み込まれ、堂々たる体躯の「ペンタケラトプスの復元骨格」が姿を現したのである。

 さて、その後のロングリッチによる調査で、OMNH 10165 からいくつかペンタケラトプスとはっきり異なる(ように見える)特徴が確認されたわけである。他のペンタケラトプスの標本には見られない、トリケラトプスと共通する特徴が見出されたのである。
 一方で、肝心のフリルの大部分が失われていること(OMNH 10165がトリケラトプス族であれば、恐らくトロサウルスをショボくしたようなフリルであったと考えられる)などから、やはりペンタケラトプスの大型個体であると見る向きもある。ペンタケラトプスが成長の過程でトリケラトプスに似た特徴を獲得する可能性は否定できない(同時に、積極的に肯定もできないのだが)。

 結局、現時点でティタノケラトプスの有効性についてこれ以上論ずるのは難しいように思える。追加標本が見つからない限り、堂々巡りの議論が続きそうにみえる。とりあえず骨格図を描きながら何となく筆者は有効でいいような気がしたのだが、しょせんは独り思いである。