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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

メガラプトルの幼体、そして・・・

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↑メガラプトル・ナムヌアイクイイMegaraptor namunhuaiquiiの幼体(A)と
ディロング・パラドクススDilong paradoxus(B)の頭骨
スケールは2cm。Porfiri et al., 2014より

 読者の皆様にはご存知の方も多かろう。最近の論文でメガラプトラ(メガラプトル類)Megaraptoraがネオヴェナトル科から切り離され、ティラノサウルス上科に組み込まれた。
 これだけでも結構衝撃的なニュース(少なくとも筆者は結構ビビった。要するにフクイラプトルもティラノサウルス上科に含まれてしまうのだ)だったのだか、さらに追い打ちをかける新発見である。メガラプトルの幼体と思しき部分的な骨格が発見され、その中に部分的ながら頭骨が含まれていたのだ。

 メガラプトル類は最近の発見で骨格のかなりの部分が揃いつつあった(アエロステオンAerosteonとアウストラロヴェナトルAustralovenatorを組み合わせることで、頭部と尾を除くほぼ全身が復元できるところまでこぎ着けた)のだが、肝心の頭骨に関してはあまりわかっていなかった。今回メガラプトルの幼体(推定全長は3mほどらしい)の脳函や吻部の骨が発見されたことで、その衝撃的な形態が明らかになった。

 メガラプトルの頭骨といえば、以前「大恐竜展2009(科博でやったヤツ)」で展示されていた「ギガノトサウルスもどき」の印象が強かろう。あれは色々な意味で危険な代物だったのだが、それはともかくとしても従来はカルカロドントサウルス類的な復元がなされることが多かった。
 今回発見されたものはあくまでも幼体であり、果たして成体になった時どのような形態になっているかは未知の部分が大きい。とはいっても、明らかにコエルロサウルス類的な頭骨である。いくつかの特徴をティラノサウルス上科のものと共有しており(恐ろしいことにメガラプトルの幼体には“D字型の断面をもつ前上顎骨歯”が存在する)、メガラプトラをティラノサウルス上科に含める説を補強する。


 さて、メガラプトラの重要な特徴の一つに、中空になった方形骨が挙げられる。かつてカルカロドントサウルス類と近縁とされていた本種だが、今回の発見も踏まえると恐らくはティラノサウルス上科に属する。―――ものすごく乱暴に言うならば、カルカロドントサウルス類とティラノサウルス類両方の特徴をもっていることになる(のか?)。

 ここまで書いて、ちょっと引っかかる読者がおられるだろうか。筆者は今年の初めの時点で気付いておくべきだった。

 年初めの記事でつらつらと書いた通り、ラボカニLabocaniaの重要な特徴として中空の方形骨が挙げられる。歯骨の棚状構造がカルカロドントサウルス類と共通していたり、そのくせ座骨はティラノサウルス類っぽかったりするわけである。T.ホルツがツイッターでちょこっと書いているとおり、ラボカニアとメガラプトラの関係が気になるところである。

 いかんせんラボカニアの化石は保存状態が劣悪である。既知のメガラプトラと比較できそうな骨は前頭骨(メガラプトル幼体)、歯骨(アウストラロヴェナトル)、方形骨(アエロステオン)なのだが、いずれも破損していたり論文の写真が不明瞭だったりで、素人目には比較は難しい気がする(単に筆者の眼力不足なだけかもしれない)。
 とりあえず、メガラプトルの前頭骨は肥厚はしていないようだ。また、アウストラロヴェナトルの歯骨には棚状構造は存在しない。とはいえ、前頭骨に矢状稜があったりなんだりの特徴は似ているようだ。ラボカニアの方形骨は派手に破損しており、素人目にアエロステオンのものと比較は難しそうだ。
 とはいえ、ラボカニアとメガラプトラの間に何らかの関係性はありそうである。不完全とはいえラボカニアの再研究の余地は十分あるのではないだろうか。
 
 メガラプトルの幼体の話をしていたはずがいつの間にかラボカニアの話になっていたのだが、なんにせよ今回の発見は重要である。とりあえずはメガラプトラをティラノサウルス上科に入れる説を補強する、重要な発見と言えるだろう。
 さらっと書いてあるのが恐ろしいが、系統図では何気にエオティラヌスEotyrannusがメガラプトラに含まれていたりする(サンタナラプトルSantanaraptorも復活している)。このあたりも含めて今後も注意していく必要があるだろう。

 何はともあれ、これで(幼体とはいえ)メガラプトラの頭骨がかなり復元できるようになったわけである。メガラプトラ全体で言えば尾を除くかなりの部分が揃ったわけで、あっ…(察し)
 とりあえずまぁ、フクイラプトルの復元骨格の頭だけでも挿げ替えた方がいいんじゃないかと思う今日この頃である。