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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

マグナパウリア、あるいは伝説の巨大ランベオサウルス

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↑マグナパウリア・ラティカウドゥスMagnapaulia laticaudusの骨格図
(コンポジット)及び模式標本と最大の標本のサイズ比較。発見部位を白で示す。
未発見のクレストが「コリトサウルス型」に復元されている点に注意。

 ランベオサウルス・ラティカウドゥスという名前に聞き覚えはないだろうか。もはや伝説の「全長16mのランベオサウルス」である。

 1960年代の終わりから1970年代半ばにかけて、ウィリアム・J・モリス率いるLACMの調査隊がメキシコのバハ・カリフォルニア、エル・ガロEl Gallo層(カンパニアン後期、7360万~7300万年前)にて発掘をおこなった。複数のランベオサウルス類の化石が発見され(いずれも同一種に属すると考えられた)、中には皮膚痕さえ含まれていた。個体のサイズは様々だったが、その中にとんでもない大物が含まれていた。

 化石の中に含まれていた頭骨は部分的ながらランベオサウルスによく似ており、ひとまず1973年にcf. Lambeosaurus sp.として報告された(このとき非常に発達した尾の棘突起が注目され、“AQUATIC SPECIALIZATION”の結果であるとされた。73年当時なので仕方ないことである)。81年になってモリスはこれらの化石を?Lambeosaurus laticaudusとして暫定的に命名をおこなったのであった。
 ランベオサウルス属かどうか断定しなかったモリスはある意味正しかったのだが、いつの間にか「?」が行方不明となってしまった。気が付けば確固たるランベオサウルスの種のような扱いで、着実に知名度を上げつつあった(大嘘)のである。

 さて、2007年ごろから、本種をランベオサウルス属とする意見に対し疑問の声が大きくなり始めた。ヒパクロサウルス属とする意見から、そもそも化石が不完全である(ランベオサウルス類の命であるクレストが欠けていた)本種の独自性そのものを疑う意見まで浮上したのである。とはいえ、一般向けの本には超大型のランベオサウルスとして書かれ続けた。

 どっこい2012年になり、本種は新属―――マグナパウリアとして再記載された。尾の特徴(すさまじく血道弓が長い―――まさしくlaticaudus(幅の広い尾)―――など)から独自性が再確認されると共に、系統解析の結果ランベオサウルスともヒパクロサウルスとも別属であることが示された(メキシコ産のヴェラフロンスと姉妹群となった)のである。ゆえに、クレストはコリトサウルス型と考えるのが妥当である。

 再研究の結果、全長は12.5mに下方修正された(もとのモリスの復元よりも尾が短くなった)。とはいえランベオサウルス亜科で最も大きな種であることには変わりなく、図でわかる通り体高は恐ろしく高い。シャントゥンゴサウルスと比べれば少々劣るものの、それでも鳥盤類にあるまじき大きさである。ガンタンクR-44とかロトと変わらないぞ、うん

 マグナパウリアやシャントゥンゴサウルス、あまり知られていないがヒプシベマHypsibemaやパロサウルスParrosaurus(ヒプシベマとパロサウルスは疑問名だが)など、「竜脚類並み」の大きさのハドロサウルス類は案外いるものである。ひとまず、カンパニアン後期のメキシコの海沿いにはこんなやつがうようよいたということを覚えておいても損はないだろう。