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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

ダスプレトサウルス一家の近況

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↑ダスプレトサウルスおよび未命名の近縁種。
"Sir William"は後眼窩骨や頬骨なども発見されている。
また、MOR 590のスケールは正確ではない。
CMN 8506の胴肋骨は全て発見されているわけではない。部位ははっきりしないが
血道弓も発見されている。

 Loewen et al., 2013というとアリオラムスがティラノサウルス科から除外されていたりで結構衝撃的だったのではないだろうか(断言)。アリオラムスの行く末もさることながら、ダスプレトサウルス属が分割されていることに気付いた方も少なくはないだろう。
 ダスプレトサウルスの模式種D.トロススはカナダ・アルバータ州のオールドマンOldman層(カンパニアン中期)から産出している。一方、より新しいダイナソー・パークDinosaur Park層からもダスプレトサウルスの一種が発見されており、かつてゴルゴサウルスとされていたFMNH PR 308もこの種に分類されている(文献によっては、DPFの種もD.トロススとしている。このDPFの種こそ、“ゴルゴサウルスと共存していたダスプレトサウルス”である。オールドマン層からはゴルゴサウルスは知られていない)。
 また、90年代から「ダスプレトサウルス(・トロスス)とティラノサウルスをつなぐ種」がモンタナのトゥー・メディスンTwo Medicine層から知られている。一般にこの種も「ダスプレトサウルスの一種」とされてきた(“ダスプレトサウルスのボーンベッド”は本種のものである)。
 Loewen et al., 2013の系統解析は、これら2種がダスプレトサウルスとは別属である可能性を示唆している。
 ほかに、近年ジュディス・リバーJudith River層(モンタナ)からもダスプレトサウルスと近い(が、少なくとも別種、恐らくは新属新種)ティラノサウルス科の化石―――“Sir William”が報告されている。(これとは別に、ジュディス・リバーからはティラノサウルスとよく似た涙骨も報告されている)


 ご存知の方も多いだろうが、かつてビスタヒエヴェルソルBistahieversorは「ダスプレトサウルスの一種」として報告された過去がある。かつて考えられた以上に、各時代、それぞれの地域ごとにバラエティに富んだティラノサウルス科の獣脚類が暮らしていたのは間違いないようだ。


◆追記(2017.3.30)◆
 かねてより新種である可能性を指摘されていたMOR 590をホロタイプとして、ダスプレトサウルス属の新種ダスプレトサウルス・ホーナーリDaspletosaurus horneriが命名された。頭骨の側面形はティラノサウルスやタルボサウルスとよく似ており、密接な関係にあったことは恐らく確かであろう。