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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

ララミディアのテリジノサウルス類

 テリジノサウルス類Therizinosaurといえば、もっぱらアジアから化石が産出している。日本でも北海道や熊本から見つかっており、白亜紀のアジアではわりと普通にいたようだ。
 さて、賢明な読者の方々は当然ご存じだろうが、近年北米からもテリジノサウルス類がいくつか命名されている。ファルカリウスFalcarius白亜紀前期バレミアン、1億2600万年前)やノスロニクスNothronychus白亜紀後期チューロニアン、9200万~9100万年前)である。
 ひとまず北米のテリジノサウルス類は白亜紀の中頃まで、というのが一般的なところだろうが、実際は異なるようだ。北米の白亜系最上部からも、テリジノサウルス類と思しき断片的な化石がいくつか産出しているのである。

 まず、ダイナソー・パークDinosaur Park層(カナダ・アルバータ州、カンパニアン後期)から、複数の前頭骨、および足の末節骨が見つかっている。前頭骨に関してはいずれもエルリコサウルスの一種Erlikosaurus sp.あるいはcf. Erlikosaurus sp.とされている(もっとも、これは比較可能な前頭骨がエルリコサウルスのものしかなかったという背景もあり、エルリコサウルス属への分類はかなり暫定的な意味が強い。■追記■この前頭骨に関してはトロオドン類のものとする意見もある)。足の末節骨については、テリジノサウルスのものと酷似しているという。

 続いて、アラスカのデナリ国立公園(マーストリヒチアン前期)から、テリジノサウルス科の足跡化石が多数産出している。当時の北極圏にもまとまった数のテリジノサウルス類が生活していた(ララミディアへの通過点、ではなく)こと、ハドロサウルス科の恐竜とよく共存していた可能性を示しており、重要な発見である。これに関してはあちらこちらで報道されたのでご存知の方が多いだろう。

 そして、いよいよ白亜紀末期である。ヘル・クリークHell Creek層(!)から、テリジノサウルス類とされる距骨(標本番号不詳)が発見されている(ただし、これについてはティラノサウルスの方形骨の誤認とする話もあるらしい。何にせよ図示はされていないのでよくわからないが…)。さらに、スコラードScollard層(ヘル・クリーク層と同じマーストリヒチアン後期)から、テリジノサウルス類とされる(単離した?)頸椎が発見されている。

 これらの断片的な化石の分類については異論も出ていることは出ているのだが、ひとまず効力のある異論とはなっていないようである。より優れた化石が発見されれば、命名される日もあるだろう。