今回の目玉の一つ、「ホーマー」ことBMRP 2006.4.1の頭骨(キャスト)。縁後頭骨と縁鼻骨以外ほとんどの部位が発見されている。トリケラトプスとしては初のボーンベッドの発見(実際には前例があったらしいのだが)ということで、大きく話題になった標本である。ホーマーを含めて3体の亜成体が1ヶ所から産出している。
ダブルカーブした上眼窩角がよく映える。亜成体のため頭骨要素の癒合はあまり進んでいない。成長段階としては、初っ端のトリケラトプスとだいたい同じ所に位置する。
ホーマーの吻骨(実物、腹側面)。ガラス越しとはいえ、なかなかお目にかかれない(この辺の記載はホーナーの論文くらいしかない)角度で観察ができる。正中を走るリッジは、左右の前上顎骨に挟まれる。
ホーマーの右上眼窩角(実物)。亜成体とはいえかなりの存在感である。
上眼窩角根元の洞も見放題。
ホーマーとは関係ないが、トリケラトプス幼体の上眼窩角(実物、明らかに先端は復元されている)。この辺の形態変化については横浜に行ってから(夏)でも記事にしたい。
前記事にうっかり載せ忘れたトリケラトプスの左歯骨のアップ。会場で触りまくろう。某ジョージのお店でトリケラの歯を買うことを考えると、なんだか眩暈がしてくる写真である。
ヘル・クリークの愉快な仲間たちも多数参戦。科博所蔵ということは、おおかたサンディサイトの産出であろう。
ヘル・クリーク層からはかつてテリジノサウルス類とされる化石(距骨)が発見されたが、現在ではティラノサウルスの方形骨の誤認とされている。が、アラスカからはテリジノサウルス類の足跡が発見されているし、ダイナソー・パーク層からはcf.エルリコサウルスが報告されている。ヘル・クリーク層と同時代であるスコラード層(アルバータ)から頸椎も発見されており、ヘル・クリーク層からテリジノサウルス類が発見される可能性はかなり高いと言える。
個人的にちょっと引っかかった化石(裸眼立体視に挑戦だ!)。キャプションでは単にTheropoda indet.(不定の獣脚類)とされている長さ13cmの末節骨である。筆者は獣脚類に疎い人なので色々とここで語るのは避けるが、ドロマエオサウルス類などと踏み込んでも良かったはずである(少なくともパッと見ではドロマエオサウルス科の「シックル・クロー」のように見える)。表面を走る溝が近位末端付近でくの字に折れ曲がるあたりが怪しい気もするのだが……(ご意見ご感想はコメ欄にでも頂ければ)。筆者が単に獣脚類に疎いだけなのかもしれない←
関節面を斜め後方から見るとこんな感じである。
ブラキロフォサウルスBrachylophosaurusの頭骨(内側から見ている)。これだけだと何が何だかわからないが…。キャプションにさらっとカンパニアンのワイオミング産と書かれていたが、筆者には思い当たる節がない(アーモンドAlmond層はマーストリヒチアン前期だった気がするのだが…)。
今回はあくまでもゲスト参戦なので、ちんまり並んでいる。
トリケラ展はここでだいたい終了。
これだけのものを屋根付きとはいえ屋外展示するあたり、けっこう頑張ってる気がする。
と思ったら本館エントランスでケルシーと再会。頭骨について観察するならここがベストである(エントランスなので邪魔にならないようにしませう)。
なんだかんだで鼻孔はかなり複雑な構造である。この写真を撮っていた筆者はなぜか頭骨のガレージキットが欲しくなった。
エントランスのおねーさんに生ぬるい目で見られつつ執拗に写真を撮りまくる筆者← この辺はたいがい破損しているのだが、ケルシーは(確か)完全な状態だったはずである。
下顎の関節もよく観察できる。なんというかややこしい構造である。
セントロサウルスの写真と比べると前歯骨の咬合面の違いがお分かりいただけるだろう(多分)。カスモサウルス亜科では、前歯骨の咬合面はほぼ水平になっている。
奥がマンモス(ケナガマンモスだったはず)、手前がナウマンゾウ頭骨の形態の違いがよく分かる。
大阪名物マチカネワニ。てっきり阪大博物館にしかないものだと思っていたのでちょっとうれしい。
ヤベオオツノジカ(なんで俺こんな角度で撮ったんだ…?)。純骨と復元部位がこのくらいはっきりわかると筆者のような人間にとってはありがたい。
残念ながらここでデジカメが餓死してしまったので写真はおしまい。アロサウルス、ステゴサウルスの復元骨格は共にクラシックなスタイルであったが、組立そのものは非常に丁寧で好感(?)がもてるものであった。素晴らしく懐かしいオルニトレステスの復元骨格(オズボーン復元)があったりと、地味に恐竜マニアが泣いて喜ぶような展示がちらほらある。
トリケラ展は非常によくできた特別展であった(と筆者は確信する)。若干しょぼい頭骨模型(ちびっ子がガンガン叩いてたけど大丈夫か?)もあったのだが、これに関してはやむを得ないだろう。写真は割愛したがトリケラトプスの暮らしていた環境に関する展示も充実しており、この規模の特別展としてはそのあたりもよくカバーしたものだと思う。図録の出来はとにかく素晴らしいの一言に尽きる。
レポートではあえて触れなかったが、今回の展示の神髄はやはり「恐竜戦国時代」にある。恐竜戦国時代の覇者とその行く末については、ぜひ自分の目で確かめてほしい。