GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

ヨコハマ恐竜展2014 ~新説・恐竜の成長~

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意外と夏休みの予定が詰まっていたり土日に行くのもリスキーなわけで、開催初日に殴りこんできたわけである。ざっくりとではあるが、レポートしたい。

***おことわり***
 筆者はトロサウルストリケラトプス問題、およびナノティラヌス―ティラノサウルス問題については別属論者である。従って、本展での表記と意図的に変える部分が少なからずあるので注意されたい。
 というわけでレポート本文だ、いってみよー!

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会場についてみたら、ちょうどオープンセレモニーが始まるところであった。思いがけず生ホーナー(+最近ケコーンされた奥様)を目撃である。着ぐるみの中の人が暑そうだった(小学生並みの感想)

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 会場に踏み込んでいきなりこれ(実物!)である。左の頬骨からフリル左半分(および右の頬骨と鱗状骨の大半)がごっそり消失し、だいぶ歪んではいるのだが、トロサウルスMOR 981と言えば既知の陸生動物において、確実に分かっているものの中では最大の頭骨(長さ2.8m)だったりする。
 実のところ前上顎骨と吻骨が完全に保存されている唯一のトロサウルスの化石であり、そういう意味でも極めて重要な標本である。

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続いて、トロサウルスの中で最良の保存状態(吻骨と前上顎骨の大部分、そして下顎を欠く)を誇る標本MOR 1122(のキャスト)。こちらも長さ2.5mというサイズを誇る立派な標本である。上眼窩角に走る巨大な血管溝に注意されたい。(ちなみにこの標本、頭骨の左半分はほとんど残っておらず、がっつり復元されている)

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トリケラトプス・ホリドゥスの亜成体MOR 1120(手前)とトリケラトプス・プロルススの成体MOR 004(奥、いずれもキャスト)。1120は亜成体ゆえにはっきり癒合していない縫合線が観察できるが、004は(元の保存状態がやや悪いことにも起因するが)縫合線が癒合して消失している。鼻角の長さの差に注意されたい。

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うっかり写真を上げ忘れていた(殴 大型幼体MOR 1110(種不明)。レプリカではあるのだが、質感が素晴らしい。

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左から、トリケラトプス(プロルスス?)の小型幼体MOR 2951とMOR 1199(種不明)、“赤ん坊”UCMP 154452(種不明)。いずれもキャストだが、素晴らしい出来栄えである。2951と1199はパンフレットでそっくり写真が入れ替わっており、注意が必要である。(展示キャプションは訂正されていたのだが、頭骨図は入れ替わったままになっている) MOR 2951は復元骨格が製作されているのだが、さすがに展示はされていなかった。上眼窩角が反り返っている点に注意である。

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トリケラトプス・プロルススの成体(ないし大型亜成体)MOR 2978。上顎骨(と右の鱗状骨)が復元されているが、あとはほぼ完全な頭骨(実物)である。MOR 981といい、ぜひ本物の質感を自分の目に焼き付けられたい。

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トリケラトプスの大型&小型幼体。前肢の復元もうちょっと何とかならんかったのか…

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サイコフレームが内蔵されているわけではなくて、いわゆるホーナー復元を再現したギミック(LEDと光ファイバー内蔵)である。この辺は会場の解説や図説(福井の時とおんなじだったよ…)を参照されたい。(角質化がここまで進んでいたかは置いといて、トリケラトプスの頭部にウロコ状の“分割線”が入っていたのは確実なようだ。ここで示されているような“面一”の表面構造ではなかったらしい)

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いまいち影の薄い展示であったが、パキケファロサウルス一家(過去記事参照、脇に置かれている頭蓋天井はトゥー・メディシン産の不定属)もちゃんといる。とりあえずここに展示されている“スティギモロク”はBHIかどっかが発掘した後頭部を“サンディ”に埋め込んだもの、ドラコレックスは「模型」である。

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ヒパクロサウルス・ステビンゲリの模式標本MOR 549のレプリカ。トサカが後頭部につながっていないことがよく分かる。

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最近オリジナルがスミソニアンに長期(っつーか半永久的)リースされることで話題になったMOR 555(のキャスト)。いまいち好きになれない標本だったのだが、いざ復元骨格を見てみるとなかなかいいものである。肩帯の復元がちと惜しい。

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MOR 555の「エサ」として置かれていたトリケラトプスの頭骨。キャプションも何もないので分からないが、とりあえず鼻骨~吻が明らかに復元されている他は、ほぼ完全に見える。実物のようにも見えるのだが…? 追記:うかつにも気付いていなかったのだが、こいつはMOR 699(の実物?)であった。見立て通り、鼻骨と吻(そして上眼窩角の大半)以外は完全な頭骨である(実際には、前歯骨と歯骨も見つかっている)。教えて下さったMaciejさんに感謝!

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ちょっとシュールな絵面である。奥のデカいティラノはやたら目が泳いでいた。

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ティラノサウルス(大型亜成体ないし若い成体)MOR 1125「B-rex」(のキャスト)とナノティラヌスの模式標本CMNH 7541(のキャスト)。B-rexはメスであったと断定されている。

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 本展の主役、ティラノサウルスの「最大の頭骨(過去記事参照)」MOR 008(実物)。強烈な存在感を放っている。

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 左側面から。茶色の部分は復元した部分(パテか何かで埋めた部分)である。少なからず歪んでおり、とばっちりを受けた左鱗状骨がはまりきっていない点に注意。

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右側面から。歪みはこちら側の方が少ないように見える。下顎が短く見えるが、これはパースが付いてるわけでもでも何でもなく、実際かなり短めである。(ティラノサウルスの場合、個体によって相対的な下顎の長さに差がある。MOR 008では特に下顎が短い)

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動刻サイドの主役。こいつが咆哮した際、連鎖的にちびっ子が3、4人雄叫びをあげていた。純粋でよろしい。

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 「よく、分かりません……。母さんです……」(AMNH 5116をモデルにしているように見える)

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こんな展示もあったり。とりあえず8割正解を目指しませう。

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これを見て科博のマイアサウラを思い出したのは筆者だけだろうか。

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ショットダイル/ディノチェイスのフレーム(大嘘) 腹部の引っ込んでるところにコアが入るんですねわかります

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父さん…酸素欠乏症にかかって……

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ステノプスじゃなくてアルマトゥスのもよう



 ほぼ割愛したが、動刻と食べ物コーナー(素直にここで食っとけばよかったんだよ俺ェ…)・物販(マスターフォッシルが出張していた。しかもROMのトリケラのレプリカを展示販売)が会場面積の半分ほどを占めており、純粋な化石の展示はかなりこじんまりとした印象である。そのあたり、やはりファミリー層向けといえばそうなのだろう。
 ただ、展示されている実物化石・レプリカは共に極めて質の高いものであり、極めて重要な標本がそこかしこに溢れている。そのあたりをきっちり拾っていくのは「大人の特権」なのかもしれない。ちびっ子の隙を突き、しっかりと展示標本を観察されることをおすすめする。