GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

西へ・・・。特別編

 大英自然史博物館展が始まってしまったわけで、大変な盛況のようである。かくいう筆者はとりあえず(強行偵察ということで)初日に潜り込んでみた(人が多すぎて潜り込めたといえるかどうか)のだが、そういうわけでロクな写真が撮れていない(例によって筆者の機材でどうこうできる撮影環境でもないのだが)。また行ったときに写真をちゃんと撮ってブログの方でレポート記事を書きたいところなのだが、取り急ぎTwitterの方に簡単なレポを書いたので、とりあえず今のところはそちらを見ておいてほしい。
 茨城県博の特別展や常設展示のリニューアルについても、隙を見てブログで書きたいところである(Twitterの簡易レポはこちら)。

(というか福井の新常設展示もこちらで記事を書くべきではあるのかもしれない。とりあえず写真はTwitterヘスペロサウルスエドモントニア)の方を見ていただければと思う)

 さて、シンポジウムやら何やらで最近話題の御船町恐竜博物館といえば、2年前のこの時期に行っていた筆者である―――が、当時は館内の写真のweb公開が禁止だったわけで、かなり適当なレポを書いたわけである。ところがどっこい、いつの間にか解禁されていたわけで、せっかくの機会である。2年越しではあるが、御船町恐竜博物館の展示のレポートを書きたいと思う。

(今回ここに掲載する写真は2015年3月に撮影したものであり、従って震災前の展示であることは断っておく)

イメージ 1
 展示室入口のすぐそばにあったのがこの“リヴィングストンの竜脚類”(キャスト)である。見ての通りのディプロドクス科で、頭骨と多数の頸椎が関節していたという素晴らしい標本である。新種の可能性が高いらしく、目下本標本(オリジナルはMORの所蔵品であり、部分的にマウントされている)の同定は不定のディプロドクス科のままであるようだ。推定年齢は10歳とされており、とりあえずかなり若い個体であるらしい。

イメージ 2
 御船といえば御船層群なわけで(当たり前)、そのあたりの展示は極めて詳細かつ丁寧である。御船層群の模型には恐竜化石のキャストが(然るべき層準に)ちりばめられている。

イメージ 3
 同じ熊本県ということで、御所浦の化石も展示。御船にせよ御所浦にせよ(恐竜マニア相手には)恐竜化石ばかりが有名だが、元々(そして今も)こういう化石の名産地である。

イメージ 10
 御船層群産の化石は分類群ごとにケースに収められており、不定の獣脚類だけでもこれだけの展示数である。御船層群のポテンシャルをうかがい知ることができるだろう。
 
イメージ 4
 恐竜ホールは回廊状になっており、多数の骨格(基本的に全てレプリカではあるが、出来の良いものを揃えている)が並んでいて大変かっこいい。が、凶暴な照明(写真で察してほしい)とえげつない展示密度のせいで、資料写真を撮影するのにはかなり厳しい展示環境ではある(そういうわけでひどい写真が続くが許してほしい)。

イメージ 5
 恐竜ホールのセンターに居座るのが、本ブログで過去何度も取り上げてきたYoshi's TrikeことMOR 3027のレプリカである。本家MORの他は2017年現在でも目下御船にしかない復元骨格であり、しかもこちらのバージョンは縁後頭骨(トロサウルストリケラトプス仮説を前提にした配置で復元されている点に注意;頭頂骨の正中線上に縁頭頂骨が置かれていない)などをアーティファクトで補った「完全版」である。びっくりするほど大きく(大腿骨は既知のトリケラトプスの中でも最長クラスなのだが、にも関わらず明らかな亜成体である)、脇にいるティラノサウルスMOR 555の骨格(キャスト)が完全に隠れている。

イメージ 6
 レプリカではあるが、表面のテクスチャーは非常に生々しい。アーティファクト部分の色が変えてあるのもありがたいところである。なぜか頬骨-後眼窩骨-鱗状骨の縫合線が本来のものからプロルスス風味に「修正」されている点に注意。

イメージ 7
 後眼窩角の付け根に粗面が発達する―――のはよくあることだが、本標本の場合、それに加えて直線的な溝が複数、平行に走っている。この状態はT.ホリドゥスのホロタイプでもみられるようなのだが、もしかするとティラノサウルスか何かに噛まれた痕なのかもしれない。

イメージ 8
 いちいち写真を出してもキリがない(だいいちスペースの関係でロクな写真がない)のだが、とりあえず一覧(筆者の記憶と写真に基づく)にすると、恐竜ホールには

トリケラトプス(MOR 3027)
・コンコラプトル
・アルヴァレズサウルス(以前幕張に来ていたタイプとは別物)
パキケファロサウルス(サンディ)
・トロオドン(MORの復元骨格と同型か)
ティラノサウルス(MOR 555)
・オルニトミムス
・スコミムス(頭骨と頸椎を換装した新型)
・アクロカントサウルス
・アニマンタルクス
・ファルカリウス(たぶん)
・デイノニクス
アパトサウルス(科博のレプリカ)
・ステゴサウルス(のど鎧をがっつり復元)
アロサウルス(よく見る肩甲骨に穴の開いているタイプ)
・コエロフィシス
・エオラプトル
・タペヤラ
・ランフォリンクス

の復元骨格(いずれもレプリカ)が展示されている(いくつか数えそびれている気がしてならない)。他にも多数の標本(例えばへスぺロルニスやマラスクス(!)、マチカネワニといった復元骨格(レプリカ)や、トロオドンの巣(のレプリカ)、さらになぜかトチサウルスの足(レプリカ)まである)が回廊の壁面に並べられており、尋常ではない密度となっている。

イメージ 9
 2階にはディアトリマ(というかガストルニスというべきか)の復元骨格やら絶滅人類の頭骨やら、小規模ながら恐竜絶滅後の古生物の展示がある。例によってレプリカの出来がよい。

イメージ 11
 恐竜ホールを2階から見ると詰め込みっぷりがよくわかる。壁に広がる展示ケースの中身もなんとなくわかるだろう。



 というわけで訪れたのはもう2年も前なのだが、せっかくなので振り返ってみた。建物の規模と展示の量が明らかに合っていないのだが、それもあって展示の密度は暴力的でさえあり、腰を据えてかかるべき博物館である。
 公共交通機関でアクセスできるとはいえ、(例によって)バスの本数が少なかったり乗り換えのタイミングが異様にシビアだったりして、実のところ筆者は2年前に訪れた際に2時間も滞在できなかった覚えがある。いずれまた、今度はもっとしっかり見に行きたい。