↑アンズーの骨格図(CM 78000と78001、MRF 319を組み合わせたもの)
発見された部位を白と灰色で示してある(灰色で示されているのはクローズアップが描かれている部位)。スケールはA:50cm、ほかは1cm
しばらく前にこういう記事を書いていたのだが、とうとう「ヘル・クリークのキロステノテス」が新属新種として記載された(かれこれ復元骨格が製作されてから10年以上過ぎてのことである)。なんだか属名がかわいい感じだが、古代メソポタミアの羽毛の生えた悪魔の名前だそうな。(アンズというか、アンズ―という表記の方が元の発音に近いようなので、そっちの表記にしておく)
一般に「キロステノテスの復元骨格」として知られていた復元骨格こそ、アンズー・ワイリーイAnzu wylieiの模式標本CM 78000とCM 78001を合体させたものである。ほかにもいくつかの標本が本種に属すると思われる(踏み込んで言えば、マーストリヒチアン後期の北米産カエナグナトゥス科獣脚類の化石のほとんどは本種のものかもしれない)。模式産地・層はアメリカ・サウスダコタ州のヘル・クリーク層(マーストリヒチアン後期、6700万~6600万年前)である。
以前から言われていた通り、本種はカエナグナトゥス科に分類された。カエナグナトゥス類としては最も完全な化石が発見されていることになり(次点がギガントラプトル)、系統関係はおろか分類すら大混乱のさなかにあるカエナグナトゥス類においては極めて重要な意味をもつ。
アケロラプトルからさほど間をあけずに記載されたということで、ランス期の連中が好きな筆者としては何となく嬉しかったりもする。