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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

タラルルス

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↑タラルルスの復元骨格PIN 557-3(のキャスト)3~6個体分の化石を寄せ集めて復元したものである点に注意 写真はウィキペディアより


 ブログ開設から5か月以上たってようやく初めての鎧竜の記事である。別に鎧竜が嫌いだとかそういう訳ではなく、単に記事を書きにくい(鎧竜は専門外の筆者)のが理由だったりする。記念すべき一発目はタラルルス・プリカトスピネウスTalarurus plicatospineusで。なぜか筆者は鎧竜の中でこいつが一番好きなのだ。(次点はリャオニンゴサウルスとミンミ sp.だったり。なんつーか、あんまりとげとげしてない奴が好きなのかもしれない)

 ソ連による一連のゴビ砂漠の大規模調査で、多数の鎧竜の新種が上部白亜系から発見された。タラルルスもその一つであり、バイン・シレBayan Shireh層(年代がいまいちはっきりしないのだが…セノマニアン~サントニアン、大雑把に9000万年前とされている)で発見され、1952年に新属新種として記載された。
 完全な骨格を模式標本とし、それを元にかなり早い時期に復元骨格(上図)が製作された。が、その後模式標本PIN 557-3とされた標本は3~6個体分の化石の寄せ集めであることが判明し、模式標本を後頭部PIN N 557/91に限定し、残りは参照標本に格下げとなった。(もっとも、いずれも同じサイトから発見されているらしく、タラルルスに属することは確かなようだ)
 
 復元骨格の頭部はなんというか、かわいい作りである。実のところ復元骨格の頭骨は後頭部以外復元されたものであり、原記載からしばらくして記載された頭骨の大部分(PIN 3780/1)を見るかぎり、これといって代わり映えはしない(眼窩はわりと大きいようだが…亜成体か何かか?)。ピナコサウルスなどと比べるとやや「細長い」頭骨である。
 復元骨格のハンマーも小さくてかわいらしいのだが、あるいはこれは亜成体であることを示しているのかもしれない実際には発見されていないらしい。もっとも、(サイズはともかく)しっかりしたハンマーを備えていたのは確かなようだ。

 かつて(半ば非公式に?)アンキロサウルス科は「アジア型」と「北アメリカ型」の2系統に(自然分類群として)大別されると言われていた時期があった。タラルルスはモンゴル産なのだが、「北アメリカ型」に属するとされ、産出年代がモンゴル産鎧竜の中で最も古いこともあって、色々とこのグループの進化において重要な意味をもつことが仄めかされていたのである。
 現在では「北アメリカ型」はアンキロサウルス科の基盤に位置する側系統群とされている。最新の分岐図でタラルルスは「北アメリカ型」の中で最も派生的な位置に置かれており、年代の古さと相まって興味深いところである。(もっとも、鎧竜の分岐図は安定のしなささに定評があり、この辺はいまいち信憑性に欠ける)