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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

アベリサウルスとギガノトサウルス

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 近年ケラトプス科の「増殖」が著しいが、アベリサウルス科Abelisauridaeだって負けてはいない。着々と種を増やし、気が付けば20属以上になっている。
 アベリサウルス科と言えば、一癖も二癖もある頭骨が魅力だろう。とか言いつつ、筆者はアベリサウルス科の中でアベリサウルスAbelisaurus comahuensisそのものが一番好きだったりする。(そこ、地味って言わない!)

 アベリサウルス科の模式属となっているあたり、研究史における本種の重要性は明らかだろう。
 アルゼンチンのパタゴニア北部、Anacleto層(最近までアレンAllen層と言われていたが、もっと古かったらしい。8000万年前(カンパニアン前期)とされている)の露出する採石場で部分的な頭骨が発見された。(そして木端微塵にされた末、R.アベルによって採集され、ブエノスアイレスの自然史博物館送りとなった)
 部分的とはいえ復元において重要となる部位はよく残っており、かなり正確な頭骨の復元が可能である。下顎や体骨格は全く残っておらず、追加標本も知られていないため、全身のプロポーションは微妙であるが…(今回はアウカサウルスAucasaurusとエクリクシナトサウルスEkrixinatosaurus、それとエオアベリサウルスEoabelisaurusを参考にしてみた)

 科の中の位置づけについては流動的であり、基盤的な位置から派生的な位置まで様々である。つい最近の研究(アルコヴェナトルの記載論文)では、カルノタウルス亜科Carnotaurinaeに置かれている。


 閑話休題、南米産の獣脚類と言えば、今でこそ日本でも様々な種が知られるようになってきたが、本格的に日本で紹介された頃(90年代前半)は、大型獣脚類はアベリサウルスとカルノタウルス、そしてギガノトサウルスくらいがやっとであった。
 ギガノトサウルスと言えば、「頭骨の水増し」で悪名高い。復元頭骨を長く作りすぎているのは間違いないようだ。(S.ハートマンの骨格図も参照
 さて、古参の恐竜ファンの方はご存じだろう。ギガノトサウルスは、アベリサウルス類と言われていた時期が存在する(古い本を辛抱強く探すと、アベリサウルス型の復元画が見つかる)。また、アベリサウルスに関しても、カルノタウルスよりはギガノトサウルスに近縁ではないかと言われていた時期もあったりする。
 ここまで書けば、筆者が言わんとしていることに気付いてもらえただろうか。
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↑アベリサウルスの頭骨図とギガノトサウルスの頭骨(写真はウィキペディアより
 
 ギガノトサウルスの復元頭骨に関しては、「水増ししてティラノサウルスの頭骨よりもずっと大きくしたかった」など、散々な意見が聞かれる。
 復元に際して下心がなかったことを否定することは難しい(ティラノサウルスを意識していないはずはないだろう)し、本来あるべき姿よりも後頭部と上顎骨が延長されてしまっているのは確かである。
 しかし、これは「水増し」というよりは、復元の根拠が後になって崩れてしまったというのが真相のように思われる。なんだかんだ90年代の終わりまで、ギガノトサウルスについては少数ながらアベリサウルス類との関連を指摘する声もあったようである。
 復元頭骨を作る際に、“きちんとした根拠(のちに否定されたが)”に基づいてアベリサウルスをモデルとして復元したという意味合いが強く、「水増し」というと少しばかり違和感を覚える筆者なのであった。