さて、かつて15種ほどが命名されていながらその後のすったもんだで2種まで減少したのがトリケラトプス属である。今回はその中でも、最も謎の多い(と勝手に認定)トリケラトプス・“エウリケファルス”について書き散らかしていきたい。
なぜかタミヤの旧トリケラトプスの英語表記がエウリケファルスになっている(明らかにパッケージアートと造形はBMNHのトリケラトプスが元であるが、こいつの頭骨(復元したと思しき部位が胡散臭い造形だが)はどう見てもプロルススである)のは置いておこう。
1930年にアメリカはワイオミング州のランスLance層にて、1体のトリケラトプスの部分的な骨格が発見された。ランス層と言えばトリケラトプスの名(?)産地であり、特段珍しくも何ともなかったのだが、翌1931年に発掘が行われると、その奇怪な姿が明らかになった。
保存状態はかなり悪いのだが、頭骨の大部分が発見されている。頭骨要素の癒合はあまり進んでおらず、亜成体のようである。素晴らしく上眼窩角が長いだけでなく、トリケラトプスらしくない形態のフリルを備えている。顔面部も妙に幅が広いように見える。下顎がやたら細い(高さがない)のも特徴的である。
また、大腿骨の長さは94.3㎝あるといい、かなり後肢が長かったようだ。大腿骨のほか、肩甲骨や胴椎は全体として華奢な作りをしているといい(図示はおろか、計測値すら発表されていないのだが)、論文中では「俊敏なつくり」だとかなんとか書かれている。(これに関しては亜成体であることが理由であるとも考えられるが、比較できる標本がほぼ存在しないので難しいところである)
フォースターによる1990年の博士論文中で有効な種であることが示唆された(らしい)本種だが、結局、保存状態が悪かったりなんだりで現在では疑問名として扱われている。非公式に(というかDinosaur Mailing List上で?)“エウリケファレ”と呼ばれたこともあったりした(どうやら最初は“エウリケファリアEurycephalia”と呼ばれた模様)が、これは黒歴史みたいなもんである。
しかし、フリルや下顎の形態など、色々と興味深い特徴があるのは事実である。あるいは、いつか有効な種として復活を遂げることもあるかもしれない。