GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

Yoshi's Trike

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トリケラトプス・ホリドゥスMOR 3027 “Yoshi's Trike”の骨格復元図。写真から描き起こしたものであり、正確性には自信がない。長い後肢と華奢な椎体に注意

 さて、ここ20年余りの発掘の進展で、ようやく体骨格を十分にともなったトリケラトプスの化石が発見されるようになった。今回は、一昨年の秋に全身骨格が復元されたばかりの「Yoshi's Trike」について書き散らかしていきたい。

 2010年、アメリカ・モンタナ州のフォート・ペック貯水池(筋金入りの方なら聞き覚えがあるはず)の近くで、「Yoshi Katsura」(もしやオリクトドロメウOryctodromeusの記載者の桂嘉志浩さんでは?)によって、トリケラトプスの化石が発見された。関節が外れて散乱していたが保存状態はまずまず良好であり、翌年の発掘で回収された。

 化石のクリーニングの進行と共に、とんでもないことが明らかになった。大腿骨の長さが4フィート(≒1.2m 資料には4フィートとしか書いてなかった)もあったのである。
 以前紹介したトリケラトプスの骨格では、大腿骨の長さは117㎝ある。トリケラトプスはおろか角竜全体を見渡しても、発見されている中ではかなり大きい部類に入るサイズである。しかし、Yoshi's Trikeの大腿骨はこれよりも長かった。
 問題なのは単に大腿骨が長いからではない。Yoshi's Trikeの上眼窩角は凄まじく長く(既知のトリケラトプスの中で最長。角竜全体を見渡しても3本の指に入る)、そして何より、まだ亜成体だった。

 Yoshi's Trikeの頭骨要素の癒合は進んでおらず(ばらけた状態で発見された)、明らかに成長の途上にあった。椎体と神経弓もロクに癒合していないようで、紛れもない亜成体である。にもかかわらず、この異様なデカさなのだ。

 Yoshi's Trikeが産出したのは、ヘル・クリークHell Creek層の中部である。下部からはT.ホリドゥスhorridus、上部からはT.プロルススprorsusが産出するのだが、面白いことにYoshi's Trikeはどちらにも似ている。
 長い上眼窩角や頬骨-鱗状骨の縫合線はT.ホリドゥス型だが、長め(と思しき)の縁鼻骨や高さのある吻はT.プロルススに近い。ヘル・クリーク層中部から産出するトリケラトプスは、両種をつなぐものである可能性が指摘されている。

 Yoshi's Trikeに関してはそのうちスキャネラらによって詳細な記載がなされるらしいので、気長に待ちたいところである。その時は、骨格図もきちんと描き直す必要があるだろう。