モンゴルはゴビ砂漠のザミン・ホンド(例のシチパチ.spの産地)、ジャドフタDjadochta(Djadokhtaと綴る場合もある)層からの発見である。ジャドフタ層の年代は揉めがちであるが、一応7200万年前(カンパニアン―マーストリヒチアンの境界近く)とされている。ジャドフタ層といえば、プロトケラトプスやヴェロキラプトルの産地として有名である。同じトロオドン科に属するサウロルニトイデスSaurornithoidesやビロノサウルスByronosaurusもここからの産出である。
それにしてもストレートなネーミングである。そのまんま、「モンゴル産ゴビの狩人」(地名にこだわるならモンゴルかゴビのどっちかを削ってジャドフタを入れるとか、それでも良かったのでは?)という意味になる。
復元骨格を見れば明らかだが、典型的な派生的トロオドン類の体型をしている。上の写真では写っていないが、当然アルクトメタターサル(衝撃吸収性の高い足の甲の構造。いくつかの獣脚類のグループで独立して存在する)も存在する。
↑ゴビヴェナトルの右足。第3中足骨の近位端(上端)が、第2、第4中足骨に挟まれて見えなくなっており、いわゆるアルクトメタターサルとなっている。
復元骨格では組み込まれていないようだが、尺骨と橈骨も発見されているようだ。全身が関節した状態で発見されており、保存状態は極めてよい。全長は1.6mとされている。(骨格図と産状写真はこちらを参照のこと)
分岐図では、ゴビヴェナトルはかなり派生的な位置に置かれている。ゴビヴェナトルよりも派生的な位置にトロオドンが置かれ、サウロルニトイデスとザナバザルZanabazarが最も派生的な位置に置かれている。(タロスTalosやビロノサウルスが意外と基盤的な位置に置かれているのが興味深い)
以前の記事にも書いたが、本種の化石は派生的トロオドン類の中では最も完全な骨格となる。骨学的に不明な点も未だ残されていたトロオドン科だが、これで基盤的・派生的なものを合わせてほぼ骨格要素が揃ったことになる。