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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

南の国のトリケラトプス?

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↑オホケラトプス・ファウラーリOjoceratops fowleriの骨格図。模式標本及び多数の参照標本に基づく。スケールは1m

 2007年ごろから始まった怒涛の角竜命名ラッシュ(恐ろしいことに現在進行形である)で、これまで不定のケラトプス科とされていたいくつもの標本が日の目を見たわけである。今回紹介するオホケラトプスの最初の標本(かどうかは実際断言はできないが…AMNH 5798:上の図の上眼窩角)が発見されたのは1904年のことであった。

 オホケラトプスはほぼ完全な鱗状骨SMP VP-1865を模式標本として、サリヴァンとルーカスによって2010年に命名された。化石はいずれも断片的であり(上の図には、オホケラトプスとされる標本のうち目ぼしいものの要素をほぼすべて取り込んである)、目下アメリカ・ニューメキシコ州のオホ・アラモOjo Alamo層のナアショイビトNaashoibito部層(マーストリヒチアン前期、6900万年前)から発見されるケラトプス科角竜の化石のほとんどが本種のものとされている。
 いわゆるランス期よりもわずかに古い時代であり、アラモサウルスAlamosaurus(ティタノサウルス類)や大型のティラノサウルス科である“アラモティラヌスAlamotyrannus”(非公式名)、オホラプトルサウルスOjoraptorsaurus(カエナグナトゥス科)、グリプトドントペルタGlyptodontopelta(ノドサウルス科)、不定のアンキロサウルス科やランベオサウルス亜科の恐竜などと共存していた。

 オホケラトプスの模式標本は「角張った」鱗状骨である。ケラトプス科にしては非常に珍しい特徴であり、ゆえに新属新種となったわけなのだが、実のところトリケラトプス・ホリドゥスのいくつかの標本でも同様の特徴がみられるらしいのである。よって、本種をトリケラトプス属、もっと踏み込んでT.ホリドゥスのシノニムとする向きも存在する。
 他の部位の特徴はより原始的ともいうのだが、いかんせん模式標本が鱗状骨のみであるため、確実にオホケラトプスであると言い切れる保証のない標本もかなり多い。
 厄介なことに、オホ・アラモ層からはかつて“トロサウルス”・ユタエンシスに分類された前科のある鱗状骨NMMNH P-22884(旧UNM B-628。現在は不定のカスモサウルス類とされることが多い…と思っていたら、最近の論文でユタトロに返り咲いていたりもする。サリヴァンとルーカスは後にこの標本もオホケラトプスとしているが、正直どちらかと言えば“トロサウルス”・ユタエンシスのように見える)が発見されている。オホケラトプスとは異なる種である可能性のある標本が発見されている以上、オホケラトプス型の鱗状骨を含まない角竜化石の分類に関してはかなり難しいようにも思える。
(もっとも、筆者としてはNMMNH P-22884を除いては基本的にサリヴァンとルーカスの標本分類で問題ないと思っている。“トロサウルス”・ユタエンシスは鱗状骨以外の頭骨要素やある程度の体骨格についても確実なものが知られているが、それらの標本とサリヴァンとルーカスがオホケラトプスの追加標本に指定したものとではだいぶ形態が異なるようだ)
 
 とかなんとか言いつつも、やはりオホケラトプスの化石は断片的であり、そして保存状態が良くないものが多い。よく揃った頭骨が見つかればまた状況にも変化が訪れるだろうが、現状ではトリケラトプスとのシノニム問題を論じるのは色々な意味で難しそうである。
 サンプソンらによる系統解析(2010)ではエオトリケラトプスそしてトロサウルス―ネドケラトプス―トリケラトプスと姉妹群となったオホケラトプスであるが、ロングリッチ(オホケラトプスをT.ホリドゥスのシノニムとしている)による2014年の系統解析ではT.ホリドゥスとネドケラトプス、そしてT.プロルスス―タタンカケラトプスと姉妹群となっている。

 ひょっとするとオホケラトプスは、最初期のトリケラトプス属ないしはT.ホリドゥスなのかもしれない(興味深いことに、既知のトリケラトプス属のなかで最古の標本はコロラドのララミーLaramie層産である。これはつまり、南方起源である可能性を示唆しているとも考えられる)。あるいは、トリケラトプス属の直接の祖先にあたるのかもしれない。筆者の意見は後者であるが、実際のところは(まだ)分からない。