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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

石頭の首から後ろ

イメージ 1
↑Skeletal reconstruction of Nemegtian pachycephalosaurids.
Top to bottom,
Prenocephale prenes holotype Zpal MgD-I/104 (adult ?),
Homalocephale calathocercos holotype  MPC-D 100/1201(subadult),
?Prenocephale prenes undescribed (private collection?) specimen (subadult).
Scale bar is 1m for Zpal MgD-I/104 and MPC-D 100/1201
(exact scale of the bottom spceimen is unknown).

 ホマロケファレ・カラトケルコスのホロタイプMPC-D 100/1201といえば数少ない「首から後ろ」の知られているパキケファロサウルス類であり、パキケファロサウルス類の復元のカギを握っていることは言うまでもない。当然(当然、である)マリヤンスカとオスモルスカによって詳しく骨格の記載が行われており、ホマロケファレの奇怪なボディプランを目の当たりにできる。神流町恐竜センターではこれの見事なレプリカを展示しており、(アクセスがだいぶしんどいのだが)機会があればぜひ見ておきたいところである。
 一方で、あまり知られていないのだが、プレノケファレ・プレネスのホロタイプZpal MgD-I/104(ポーランド科学アカデミーはモンゴル遠征で採集した標本の返還を進めているのだが、2011年時点ではまだワルシャワにあるようだ)も首から後ろの要素を残している。これはホマロケファレのそれと酷似しており(サイズも同じと言ってよい)、それっぽく相互補完させることができる。

 ホマロケファレそしてプレノケファレの体骨格はステゴケラスのそれと(ちょっとした違いはあれ)よく似ており、それらの情報を総合することで肩帯と(手を除く)前肢をも復元することができる。
 往年のグレゴリー・ポールによるホマロケファレの骨格図(フィールドガイド掲載のものは頭部をプレノケファレに挿げ替えただけ)はそのあたりをきちんと押さえていたのだが、悲しいかな頸椎と前方胴椎は参考にする当てがなかったことから(その辺の小型鳥脚類などを適当に参考にして)「それっぽく」描くほかなかったのである。膝下の長さや足骨格についても同じことであった(そもそも大腿骨も長さはともかく転子の形態がはっきりしない有様であった)。
 “サンディ”はいくつか頸椎を保存していた――のだが(この際未記載であることは、もはや気にしても仕方がないところである)、いくつかではいかんともしがたい。“ドラコレックス”もいくつかの頸椎を保存しており(幸か不幸か“サンディ”とは重複しない部位らしい)、これまた両者を組み合わせることでそれなりに(数がはっきりしないのだが)頸椎~前方胴椎を復元することができる。“サンディ”では尾を除く全身がまんべんなく(不完全ながら)残されているが、やはり基本形はホマロケファレやステゴケラスと変わりないようである(一方で、胴椎の棘突起の高さや後肢の長さの違いは興味深い)。

 これらの標本をかき集めることである程度はパキケファロサウルス類の全身を復元できそうなものだが、そうは言っても属間のプロポーションの違いらしいものもうかがえ、どう考えても一筋縄ではいかなさそうである。しかし、幸か不幸か――プライベートコレクションに入ってしまったらしい――プレノケファレの亜成体と思しき、ほぼ完全な骨格(下顎と手、尾の後半以外は実質完全)が発見されているのだ。
 この骨格の椎骨はどうやら完全に関節した状態で残っているらしく、上で述べた標本を組み合わせただけでは個数のはっきりしなかった仙前椎を完全に復元することができる。ホマロケファレのホロタイプでは割と不完全だった後肢も(いくつか趾骨が欠けているものの)見事に保存されており、そのプロポーションを知ることができる。鳥盤類としては極端に短くなった前肢もはっきり見て取ることができる。

 まとめる気が1mmもない記事なのはとっくに察していただけているだろうが、そういうわけでパキケファロサウルス類の首から後ろの復元は極めて厄介である。手骨格や尾の長さについて直接参考にできる標本はなく、また“サンディ”は未だ記載がなされていない。プライベートコレクションの骨格については論外でさえある。
 それでも、20年以上前のポールのホマロケファレの骨格図を頼るほかなかった頃よりは幾分マシな状況であることには違いない。ネットが使えるだけずいぶんいい時代になったものである。

(プレノケファレとホマロケファレのシノニム問題については敢えて突っ込んだことは書かない(皮骨の配置にせよ歯列の違いにせよ微妙なところである)が、首から後ろの骨格については(プライベートコレクションのものも含めて)基本的にそっくりである。ホマロケファレのホロタイプで癒合している尾椎の神経弓と椎体がプライベートコレクションではまだ癒合していないあたりは興味深いが、このあたりのタイミングの話は一筋縄ではいかなそうでもある。標本の数が揃ってこないと仕方のない部分も大きいだろう。)