鮮度はすっかり落ちているのだが、振り返ってこそ書ける内容もあるだろう。というわけで、まずはギガ恐竜展のレポートからいきたい。
最初に出迎えてくれるのはエクイジュブスEquijubus(とヤンチュアノサウルス(よく見る元スゼチュアノサウルスCV 00214)の対決ポーズ)のマウントである。エクイジュブスはホロタイプではなく参照標本に基づくもので、なかなかの迫力…なのだが、頭骨(完全にアーティファクトである)が妙に小さく復元されている。
抜群に状態が良好なのだが、歯骨歯が抜けかかってえらいことになっているディロサウルス。ミネラルショーで買ってきた感にあふれている。
復元骨格というか完全な模型なのだが、ランフォケファルスRhamphocephalusという謎のチョイスが光る。もろもろの理由で新属にすべきらしいがその辺は気にするな!
いのちのたび博物館で常設展示されているジェージャンゴプテルスの頭骨の実物が来日。どうみても母岩の方が骨より硬い、いかにも厄介そうな標本である。頸椎らしいものも見える。
ヤンダンゴルニスYandangornisという訳の分からないものまで実物(ホロタイプ)が参戦。どっからどうみても鳥には見えないのだが。。。
エクイジュブスの産状はレプリカなのだが非常に出来がよい。一応上のマウントの元になった標本らしいのだが。。。?
コエロフィシスのブロック(昨年の福井でも来日していた標本である)にはちょいちょい写真のような怪しげな物体が含まれている。これはヴァンクリヴィアVancleaveaの皮骨であり、特に右のものは尾そのもののようだ。
竜脚形類はメガ恐竜展で見たものが少なからずある中にもちょいちょい珍しい実物があったりもするのだが、そういうのに限って光源が悲惨だったりでロクな写真が撮れないものである(堅頭竜類は別段珍しいものの展示はなかったので割愛)。その点今回の鎧竜は色々と恵まれており、珍しい面子で固めている。タラルルスの復元骨格から本来あるべき特徴を見出すのはほとんど不可能なのだが、手骨格が左右逆なのを差し引いても愛らしいものである。
顔の左半分が作り物だったり(そもそも上下方向の変形の補正は一切なし)皮骨の配置がアレだったりはするのだが、全体的にこの未命名のアンキロサウルス類はよくできている。一昨年の福井でみかけた標本を元に組み立てられたようだ。
一昨年の福井でも見かけたこのコンポジットマウントは案の定チアンゼノサウルスTianzhenosaurus名義になっていた。コンポジットとはいえ(皮骨の配置を除けば)かなりよくできているようにみえる。中手骨がよく揃っている(これは多分同一個体由来だろう)あたりなども貴重である。
別に展示されていたチアンゼノサウルスの頭骨は抜群の保存状態である(光源が無残なのが惜しまれる)。チアンゼノサウルスの骨学的な研究は最近進められつつあるようで、サイカニアのシノニム問題も含めて色々と期待がもてそうだ。
剣竜やらも福井からの出張組で、ヘスペロサウルス(や自称エドモントニア)などは林原でかつて展示されていたマウント(オリジナルがFPDMで常設展示に回されたのは周知のとおり)である。コンカヴェナトルは案の定「模型」だけの展示で、うーん。
ルヤンゴサウルスの復元骨格は思ったよりまとも(まともとは言っていない)だったのだが、何より頸椎や胴椎列といった原記載では未記載だった要素(の実物)が多数来日していたのは非常に大きい。30m超級の竜脚類(それもディプロドクス類のようなすらりとしたタイプではなく)のまとまった化石を間近で眺める機会はそうあるものではなく、結局のところ目玉にふさわしい展示ではあった。
脇に置いてある危険すぎる復元骨格はさておき、ルアンチュアンラプトルLuanchuanraptorのホロタイプもなかなか見ごたえがある。ドロマエオサウルス類とは言うものの、腰帯や尾椎の作りからするとかなり基盤的なタイプのように見える。
見慣れない竜脚類だが、これはシエンシャノサウルスXianshanosaurusである。ググっても特に情報が引っ掛かってこないあたり色々とお察しいただけようが、とりあえず保存状態はなかなかのものである。頭部と前肢以外ほぼ全身が揃っているあたりも非常に高ポイントである。
全盛期のツェルカスの模型はいつ見てもよいものである。
フクイサウルス…というかフクイリュウのロボットは(ここしばらく倉庫で寝かされていたのだろうが)驚くことにまだ現役であった。MORから福井に身請けされたトロサウルスの模型は、言うまでもないが首から後ろが本来あるべきサイズの2割増しくらいになっている。
このあたりのキャスト(なかなかの出来)は塗装があっさりしている分、実物よりはるかに骨の観察がしやすい。筆者にとっては恐竜博2002以来の顔がちらほらいるのも嬉しいところであった。
初めて見る型のプシッタコサウルスである。胴体の輪郭の面影が残っているあたり非常に楽しい。このプシッタコサウルスやシノサウロプテリクスのキャストは上のプロタルカエオプテリクスなどとは塗装が別物であり、科博のミクロラプトルと同じ工房が手掛けたもののようにみえる。
筆者はレオナルド(のキャスト)を拝むのも初めてであった。塗装が厚塗りなのが少々痛いが、それでも皮膚痕やら何やらがはっきりと見て取れる。
出版された論文の通り、ワイレックスWyrexの尾(第6~第8尾椎)の「ウロコ」は驚くほど小さい。少なくともワイレックスの皮膚痕の見つかっている部分に関していえば、ウロコを描き込むべきではないということである。ワイレックスの復元骨格自体はどうも完全にスタンの「改造」であり、ワイレックス要素は実質的に尾椎しか組み込まれていないようだ。皮膚痕が保存されている一方で見ての通り尾椎そのものはかなり風化が進んでおり、スタンの復元骨格についても色々と考えさせられる。
シノルニトミムスの産状レプリカは見飽きないものである。このあたりを拝む機会もなかなかないものだろう。
シノルニトイデスのホロタイプ(のキャスト)もいつ見てもよいものである。そろそろいい加減解体して詳しく記載してもバチは当たらないように思うのだが。。。
福井の特別展と比べて扱いがだいぶよくないのだが、幕張のこちらが実物である。まだ卵いっぱいに育ち切っていないあたりもポイントだろう。
恐竜博2002以来の再会なのだが、当時とは変わり果てた姿である。こいつの顛末は過去記事に書いた通りである。
改めて見るとユタラプトルの復元骨格はなかなかに意味の分からない代物であった。頭骨の形からして何がしたかったのか色々とアレな感じである(小学生がタミヤのミニ四駆改造セットのピンバイスで開けたかのような謎の孔が楽しい)。
ティラノサウルス類や角竜の展示も基本的には福井の特別展と変わらない面子であった(ビスタヒエヴェルソルが全方位撮影可能だったのは素直に嬉しい)。このタルボサウルス(アーティファクトがひどい)がホロタイプなのは言うまでもない。
イクチオヴェナトルをはじめ、一昨年の福井特別展の目玉だった東南アジア組をまた見れたのは嬉しい。イクチオヴェナトルは福井での展示とは左右逆になっており、右側面がよく観察できた。
メガ恐竜展が色々とアレだったこともあって当初はかなり警戒していたのが正直なところだったのだが、情報が出そろってくれば半ば(というかほとんど)FPDMの出張特別展といった具合であった。実際、FPDMのコネクションでかき集めてきたらしい標本がかなりの数を占めており、結果的にここ数年におけるFPDMの特別展のいいとこどりのような雰囲気ではある。復元骨格は(致し方なしだが)玉石混交といったところだが、足跡やら卵やらも含め、単発の標本はさすがに粒ぞろいであった。恐竜博2002以来となる標本(のキャスト)が少なからずあったのも、筆者にとっては感慨深かったところである。