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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

せぼねのはなし

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バルスボルディア・シキンスキイの骨格図。
図示したほかにいくつかの肋骨や恥骨の一部、脚の断片なども見つかっている。
スケールは1m
Skeletal reconstruction of Barsboldia sicinskii
Some ribs, partial pubis and fragmentary hind limb are also recovered. 
Scale bar is 1m.
Based on Maryańska and Osmólska(1981), Prieto-Márquez(2011).

 モンゴルの鳥脚類とひと口に言っても色々あるわけである(最近になってバクトロサウルスの年代がやたら新しくなっていることにビビった筆者。サントニアンくらいだと思ってたのぜ)。未記載種もちらほらいるようで、従来よりも面子がにぎやかになるのは確実なわけであるが、中には当然知名度の低いかわいそうなお友達ものもいるわけである。

 そんなわけで今回はバルスボルディアを取り上げようと思う(ググってみたら一応恐竜ドミニオンにいるようである。目つきの悪いコリトサウルスにしか見えないが…)。

 バルスボルディアの模式標本(にして唯一の標本)ZPAL MgD-I/110が発見されたのは1970年、ポーランド―モンゴル共同調査の最中であった。ネメグト層(マーストリヒチアン前期、7000万年前ごろ)に眠っていたそれは、椎骨が関節した状態で保存されていた。上半身や尾の後半部は風化して失われていたこともあり、当初はネメグト層でよく見つかるサウロロフス・アングスティロストリスSaurolophus angustirostrisとされていた。

 サウロロフス・アングスティロストリスの研究が進むにつれ、ZPAL MgD-I/110がサウロロフス・アングスティロストリスでないことは明白となった。サウロロフスにしてはあまりにも棘突起が高かったし、仙椎の腹側にキール―――ランベオサウルス類に一般的―――が存在したのである。
 こうしてZPAL MgD-I/110は新属新種のランベオサウルス類として記載された。ネメグト層では唯一のランベオサウルス類であり、肝心の頭骨が失われているとはいえかなり重要な意味をもつ。…はずだった。

 結局のところ、恐竜(というよりは脊椎動物一般)の分類は、やはり頭骨の情報にかなり依存している。追加標本がさっぱり見つからなかったこともあり、疑問名とされることもあった。
 そういうわけで知名度のないまま系統不明のランベオサウルス類として過ごしてきたバルスボルディアであったが、近年の再研究で思わぬ展開を迎えた。腸骨の特徴から、ランベオサウルス類ではなくサウロロフス類に分類されたのである。

 系統解析の結果、バルスボルディアはサウロロフス亜科の基盤的な位置に置かれることとなった。依然として知られている骨格要素は限定的ではあるが、今日では有効なサウロロフス類として認められている。基盤的なサウロロフス亜科であるならば、ブラキロフォサウルス族のようにちょっとしたトサカがあったのかもしれない。