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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

ウェンディケラトプス

↑Composite skeletal reconstruction of Wendiceratops pinhornensis.
Recovered elements represented by blue.

 何度かこのブログでも取り上げている(嘆いている)が、ケラトプス科の初期進化に関する化石記録はかなり少ない(放散してからの化石記録がやたら多いといえばそうかもしれないが)。カンパニアン中期以前のケラトプス科角竜で命名されているものはそう多くなく、実態のよくわからないものも少なくない。

 2011年、カナダはアルバータ州南部、オールドマンOldman層の下部(7900万~7870万年前)で、ちょっとしたボーンベッドがウェンディ・スロボーダ(若かりし頃の写真が90年の恐竜博のパンフに載っているらしい)によって発見された。
 ボーンベッドはほとんどが角竜―――分類可能な要素はいずれもセントロサウルス類―――からなっており、その中には明らかに新種のフリルが含まれていた。ボーンベッドの角竜化石(少なくとも成体および亜成体が3体、幼体が1体)は全て同じセントロサウルス類の新種であると判断され、このたびウェンディケラトプス・ピンホーネンシスWendiceratops pinhornensisとして記載されたわけである。

 ウェンディケラトプスのボーンベッドには、個体/サイズは違えど多数の骨格要素が含まれており、初期のセントロサウルス類に関する貴重な情報を提供している。
 鼻骨は不完全ながら、この時期にすでに明確な鼻角が現れていたことを示している。座骨の遠位端は(座骨が記載されている)いずれのケラトプス科角竜とも異なっているといい、もしかすると基盤的なセントロサウルス類の特徴を示しているのかもしれない。
 ウェンディケラトプスの縁頭頂骨は背側(上側)にカールしており、シノケラトプスのそれとよく似ている(一方で、シノケラトプスにみられる正中線上の第0縁頭頂骨を欠いていたりもする)。系統解析の結果ウェンディケラトプスとシノケラトプスは姉妹群となり、アルバータケラトプスと派生的セントロサウルス類それぞれと姉妹群をなす格好となった。
 とはいえ、ウェンディケラトプスとシノケラトプスの間には、(仮説的な上眼窩角の存在を抜きにして)それなりに形態の差がある。シノケラトプスのフリルには第0縁頭頂骨や頭頂骨表面の多数の突起が存在するが、ウェンディケラトプスにはそれが存在しない。系統解析でのウェンディケラトプス―シノケラトプスクレードの信頼性も高くはないようで、このあたりは今後の新発見を待つしかなさそうではある。

 ウェンディケラトプスはアルバータケラトプスと同じ年代に生息していたらしい。この時期すでに、ひとつところで多様なケラトプス科角竜を見ることができたようだ。