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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

Almond "Anchiceratops"

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↑Cranial elements of Almond ceratopsian. 
A, B, AMNH 3652. C, AMNH 3656.  Scale bar is 5cm. 

 地味に忙しくて(最近こればっか)気が付けば丸一週間放置である。要は今までの筆者がヒマすぎたということでもあるのだが、そこは気にしないでほしい。

 さて、アメリカはワイオミング州の南西部には、アーモンドAlmond層が分布している。アーモンド層の年代はカンパニアン末期~マーストリヒチアン初期とされているのだが、この時代の北米の他の(恐竜の出る)地層(で研究がよくなされているもの)といえば、カナダのホースシュー・キャニオンHorseshoe Canyon層と、アメリカのハヴェリナ層くらいしかなかったりする。
 アーモンド層自体は1937年にブラウンらが発掘してきりという状態(2004年~2005年にかけてファルケとユタ博のメンバーが調査したが、空振りに終わった)で、種レベルで同定のできそうな恐竜化石はまだほとんど見つかっていない。それでも、いくつか非常に興味深い化石もある。
 ブラウン隊が採集した化石の中には、フリル以外ほぼ完全な角竜の頭骨(と腸骨など;AMNH 3652)や、フリルの断片(AMNH 3656)、ハドロサウルス類の部分骨格(AMNH 3651;カーペンターによってランベオサウルス類であるとされていたが、最近の再記載でサウロロフス属である可能性が指摘されている)などが含まれていた。比較的最近になってこれらの標本の記載が進み、カンパニアン末~マーストリヒチアン初期の北米恐竜相が少しずつ明らかになっている。
 
 長い上眼窩角と短くて高さのある吻が印象的なAMNH 3652は、カスモサウルス類の中でも派生的なものである可能性が指摘されている。AMNH 3656はだいぶ破片化しているのだが、とりあえず三角形の大きな縁後頭骨がある点はポイントで、アンキケラトプスのフリルと厚みなども似ているらしい。
 最近の系統解析(Longrich, 2014)では、これらアーモンド層の角竜はアンキケラトプス・オルナトゥスと姉妹群とされている。フリルが不完全なのが痛いが、アンキケラトプス属ないしそれとごく近縁な新属ということになりそうである。

 カンパニアン末期~マーストリヒチアン初期にアンキケラトプスに近縁な角竜がワイオミングに分布していたというのは何気に興味深い話である。この時期、もっと派生的な角竜(ブラヴォケラトプス)がアメリカ南西部にはすでに存在しており、恐らくはアメリカ南西部でトリケラトプス族が産声を上げる頃でもある。

 ひょっとするとこのアーモンド層の角竜は、南からやってくるトリケラトプス族の姿を見たのかもしれない。マーストリヒチアン後期のワイオミングには、すでにトリケラトプス族以外のケラトプス科の姿はなかった。