GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

レガリケラトプスRegaliceratops

イメージ 1
↑Skull of Regaliceratops peterhewsi  TMP 2005.55.1(holotype). 
Left lateral view (A), preliminary reconstruction (B),
rostral view (C), dorsal view (D).
Scale bar is 10cm for A, C and D. 1m for B.

 角竜に詳しい方なら、"Hellboy"(アメコミのキャラではない)、あるいは"Oldman River chasmosaurine skull"に聞き覚えがあるのではないかと思う。角竜シンポまとめ本のおまけCD(というとなんだかすごく同人臭い)にちょこちょこ記述があったりして、とりあえず「トリケラトプスサイズの」、「驚くほど短い上眼窩角をもつ」、cf.アンキケラトプスがアルバータ南部から産出していることは知られていたわけである。
 結局のところ、この頭骨TMP 2005.55.1はアンキケラトプスではなかった。めでたくファーストオーサーによる彼女へのプロポーズ付き(!)で、新属新種の角竜レガリケラトプス・ピーターフュージRegaliceratops peterhewsiとして記載されたので、ざっくりとではあるが紹介しておきたいと思う。

(論文の「謝辞」の末尾に彼女へのプロポーズの文言が出ていたわけであるが、「謝辞」の内容はわりとフリーダムなものが珍しくない気がする。筆者がいくつか手に取った卒業論文でも愉快なことが書いてあるものが複数あったし、某ゲームの某キャラへの感謝(意味深)を述べた博論だか何かもこの世には存在するらしい。筆者としても、卒論には何か気の利いた楽しいことを書いてみたいものである。)

 レガリケラトプスの模式標本(にして目下唯一の標本)が産出したのは、カナダはアルバータ州南部、セント・メアリー・リバーSt. Mary River層上部(マーストリヒチアン中期、6850万~6750万年前ごろ)である。年代としてはちょうど(いわゆる)エドモントン期とランス期の境界にあたり、恐竜相の移り変わりやら何やらを考える上でも重要である。
 頭骨は前後方向に圧縮されているが、保存自体はかなり良好である。縫合線が閉じきっていない部分はあるものの縁後頭骨(上図のPおよびPS、S)などは癒合しており、とりあえず成体と考えてよさそうだ。
 細長い鼻角と短い上眼窩角の取り合わせはいかにもセントロサウルス類Centrosaurine的ではあるが、前上顎骨やフリルの構造は紛れもなくカスモサウルス類Chasmosaurineのそれである。角の長さでセントロサウルス類とカスモサウルス類を区別できなくなって久しいのだが、この辺は改めて注意しておくべきだろう。
 フリルの形態はかなり独特である。大きなへら状の縁後頭骨はアンキケラトプスめいた雰囲気もあるのだが、P0(第0縁頭頂骨)が出っ歯のように突き出している点は興味深い。頭頂骨窓は小さめである。

 系統解析からは、レガリケラトプスがトリケラトプス族Triceratopsiniの基底に位置することが示された。また、角竜のフリルの進化についても新しい仮説が提唱されている。
 いわく、ペンタケラトプスやアンキケラトプスにみられる1対の“反り返った”縁後頭骨(従来P1と解釈されてきた。レガリケラトプスの記載論文ではP0とみなされている)が癒合して、トリケラトプス族でみられる正中線上のP0となったという。(この説自体は今に始まったことではないのだが、レガリケラトプスの“出っ歯”はこの仮説を補強する。)

 今回の系統解析では、従来「基盤的」~「中間型」カスモサウルス類として側系統になっていたカスモサウルス―ブラヴォケラトプスが、"Chasmosaurus-clade"として単系統とされた。一方でアンキケラトプス、アリノケラトプス、トリケラトプス族は(ほぼ従来通り)"Triceratops-clade"としてひとくくりになっている(ヴァガケラトプス―コスモケラトプスは今回カスモサウルス類の最も基盤的な位置に置かれた)。このあたり、科内の系統関係が“落ち着いて”いたケラトプス科角竜に揺さぶりがかかったわけである。結局のところ、一考も二考も余地があるということらしい。
 
 マーストリヒチアンの角竜(実質的にトリケラトプス族のみである)は地味であると言われて久しい。カンパニアンの絢爛豪華な連中と比べると、基本的にマーストリヒチアンの角竜の装飾は長い上眼窩角・(多少幅はあるが)短い鼻角・短い/低い縁後頭骨一択だったわけである。しかし、レガリケラトプスの発見は、必ずしもマーストリヒチアンの角竜の装飾がバリエーションに乏しかったわけではないことを示している。一時は「掘り尽くされた」とまで言われたケラトプス科角竜だが、決してそんなことはないのは昨今の命名ラッシュを見れば明らかである。

■追記■
k-taさんが描かれたレガリケラトプスはこちら(記事もよくまとまっていてこっちの100倍は読みやすいぞ!)。肉付けするといい面構えです。