↑Left, Wangshi sauropod cervical vertebra
PMU 24707 (formerly PMU R 262) in right lateral view.
Right, Wangshi sauropod dorsal vertebra
PMU 24708 (formerly PMU R 261) in right lateral view.
Modified from Poropat (2013).
最近メジャーなひとの記事が多かった気がするので、たまにはドの付くマイナーなひとについて書きたいと思う。
カール・ワイマンで竜脚類といえば、エウへロプスを思い浮かべる方がほとんどだろう(もちろん筆者もである)。ただ、実のところワイマンはいくつかアラモサウルスの化石も集めたりしているし、王氏Wangshi層群(本ブログの読者のみなさまにはもはやおなじみ)でもいくつか竜脚類の化石を採集・記載している。
これらの化石(頸椎;PMU 24707、胴椎;PMU 24708、部分的な大腿骨;PMU 24710)は、(おそらく)いずれもタニウスと同じ、王氏層群の将軍頂Jiangjunding層(カンパニアン末~マーストリヒチアン前期)産である。単離した標本であり、保存状態もぱっとしないが、アジアのこの時期の竜脚類化石はあまり多くないこともあり、貴重な化石である。
ワイマンはこれらの化石の分類について深入りはしなかった(できなかった)のだが、最近になって予察的な再研究がおこなわれている。
頸椎の椎体は前後に非常に長く伸びており、エルケツErketu(モンゴルのバインシレBaynshiree層産、セノマニアン~サントニアン頃)との類似性が指摘されている。また、胴椎は"Bor Guvé titanosaur"(バインシレ層産;エルケツかどうかははっきりしない)と似た特徴がみられるという。
予察的かつ断片的な標本に基づいている研究ではあるが、さりげなく示唆に富んでいる。エルケツは基盤的なティタノサウルス形類、"Bor Guvé titanosaur"は基盤的なティタノサウリアとされており、したがってワイマンが記載したこれらの竜脚類(1種かもしれないし、複数種なのかもしれない)はかなり基盤的なティタノサウリア(下手をすればティタノサウリアから外れる)の可能性がある。
この時期(カンパニアン末~マーストリヒチアン前期)の竜脚類は世界的に(派生的な)ティタノサウリアが席巻しており、基盤的なものが生き残っていたとすれば興味深いところである。ましてこの時期のアジアには派生的なティタノサウリアがうようよしていたはずで、よくぞ生き残ったという感すらある。
ところで、王氏層群の(おそらく)紅土崖Hongtuya層からも竜脚類の化石が発見されており、復元骨格も製作されていたりする(恐竜王国2012で来日している)。目下この竜脚類に関する研究云々の話は聞かないのだが、ワイマンの記載した竜脚類との類縁性が気になるところである。