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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

タニウス

イメージ 1
↑Skeletal reconstruction of Tanius sinensis.
Based on type specimens. Scale bar is 1m.

 これといって華がない(失礼)のにも関わらず、なぜか好きなものというのは少なからずあるだろう。そういうわけで筆者はなぜかタニウスが好きである。
 前々から骨格図を描こうと思っては資料不足に泣かされていたのだが、とある方のご厚意で資料をいただいた。資料が手に入った以上、描かない理由はないわけである。

 タニウス発見に至る経緯は前に書いたのでそちらを読んでいただきたい。中国は山東省、将軍頂Jiangjunding層(カンパニアン末~マーストリヒチアン前期)の産出である。
 タニウスの最初の化石は、中国地質調査所の譚錫疇によって1923年の4月に発見された("Exemplar 1";後頭部とその他の体骨格)。さらに、10月になってツダンスキーが現場に到着した際、新たに完全な上腕骨(孤立した?状態だったとかなんとか)を採集した("Exemplar 2")。

(というようなことがドイツ語で書いてあった。多分。不幸にして筆者はドイツ語がさっぱりなのでgoogle先生のお世話になったわけである。
 Exemplar 1の中でも部位ごとに異なる標本番号が与えられている(頭骨にはPMU R240、肩甲骨にはPMU R241、腸骨にはPMU R242、胴椎にはPMU R237)が、多分Exemplar 1はひとつの個体のはずである(少なくとも、矛盾するサイズではない)。
 上腕骨にはPMU R235のナンバーが与えられているが、これがExemplar 1なのか2なのかはよくわからない。恐らくはExemplar 2だと思われるが。。。
 Exemplar 1(の復元した上腕骨の長さ)と2の長さは2mmしか違わないので、同じ個体だと考えてよいだろう。
 とかなんとか書いたが、標本番号はここ数年で書き換えられているはずなので注意が必要である。)

 Exemplar 1は元来もっと完全な骨格だったらしいのだが、採集できたのは上に示したぶん(+肋骨2本)だけだった。頭骨の前半部が欠けているのは実に惜しいが、主要な要素が揃っているのはありがたい。

 頭骨の特徴はバクトロサウルスBactrosaurusとよく似ており、近縁であった可能性を示唆している。また、腸骨はギルモアオサウルスGilmoreosaurusとも似ている。胴椎の神経棘はかなり高くなっており、ちょっとした帆があったことを示している。
 原記載ではハドロサウルス科とされていたタニウスだが、今日の系統解析ではバクトロサウルスなどと共に、プロトハドロスProtohadros以上テルマトサウルスTelmatosaurus以下ぐらいのポジションに置かれている。解析によってはバクトロサウルス、レヴネソヴィアLevnesoviaと小グループを作り、かなり基盤的な一群(レヴネソヴィアはチューロニアン中期~後期である)が、カンパニアン末~マーストリヒチアン前期まで生き残っていたことを示唆している。

 山東省の金崗口Jingangkou層(マーストリヒチアン前期~中期)では1950年代に大規模な発掘が行われ、多数のハドロサウルス類の化石が発見されている。ほとんどはチンタオサウルスとして記載されたが、いくつかはタニウス属の新種タニウス・チンカンコウエンシスT. chingkankouensisT. ライヤンエンシスlaiyangensisとされた。
 いずれも部分的な化石であり、独自性には疑問の余地が大きかった。今日では一般に、この2種はチンタオサウルスのシノニムとして扱われている。
 

そういうわけで(唐突)水曜からちょいと旅に出ます。博物館レポをお楽しみに!