Ⅰ. Amphicoelias altus; Ⅱ. Diplodocus carnegii; Ⅲ. Supersaurus vivinanae;
Ⅳ. A. fragillimus (newly reconstructed neural arch height of 1050 mm);
Ⅴ. A. fragillimus (based on measurements described by Cope);
Ⅵ. Reconstructed dorsal vertebra of A. fragillimus modeled after A. altus;
Ⅶ. Reconstruction of A. fragillimus using vertebral trends observed
throughout Diplodocidae ontogeny
(note the general proportions were modeled assuming
A. fragillimus maintained similar proportions to that of S. vivianae).
Scale bar is 1m.
Image from Woodruff and Foster, 2014
こういう美味しいネタはあとあとまで取っておくべきな気もするのだが、凄まじい論文が出たので触れないわけにもいかないだろう。
アンフィコエリアス・フラギリムスAmphicoelias fragillimusと言えば、もはや伝説の「超」巨大竜脚類である。コロラド州のガーデン・パーク(モリソン層のほぼ最上部)にて発見された部分的な神経弓に基づき、コープによって1878年に命名されている。
そもそも、A.フラギリムスの陰に隠れて印象が薄いのだが、アンフィコエリアスの模式種はA.アルトゥスaltusである。こちらも1878年(論文はA.フラギリムスより先行)に命名されているが、フラギリムスよりも標本は多少マシ(胴椎2つに恥骨、大腿骨)である。また、後に肩甲烏口骨や橈骨、歯が追加標本として同定されている。系統解析ではもっぱらディプロドクス科の基盤的な位置に置かれているが、どうも模式標本は未成熟であるらしく(それでも推定全長は25mほどになるのだが)、ディプロドクスのシニアシノニムとなる可能性も指摘されていたりする。仮にそうだとしても、ディプロドクスが保護名になるのは間違いないだろうが…。
話を元に戻すと、A.フラギリムスの神経弓はとてつもなくデカく、保存されていた部位の高さが1500mmとされている。これほど大きいと、文句なしに(既知のものでは)最大の竜脚類と言ってしまって良さそうだ(こういう見方もあるにはあったりするが…)。
ところが、ご存じの通りA.フラギリムスの標本は現存していない。論文1本で簡潔に記載されたあと、そのとてつもないデカさにも関わらず、忽然と姿を消したのである。コープのいつものパターンからすれば、その後数回にわたって詳細に記載しそうなものなのだが、そういった動きもなかった。マーシュと張り合う絶好のネタであるにも関わらず、である。AMNH 5777という標本番号まで用意されていたのだが、とうとうAMNH 5777が一般の目に触れることはなかった。
そもそもがコープのでっち上げに過ぎないという陰謀論めいた話もあるらしいのだが、これに関しては色々な理由から否定される。A.フラギリムスの発掘された当時は化石の保存技術は極めて貧弱であり、「fragillimus」の種小名が示す通り、あまりに脆かった標本は発掘後にどうしようもないほど損傷してしまったというのが一番もっともらしい話である。
さて、A.フラギリムスの全長はどのくらいになるのだろうか。他の一般的なディプロドクス科の復元に従うなら、40~60m(!)になる。最近の研究(Carpenter, 2006)では全長58mと推定されており、いずれにしても、いわゆる「世界最大」の連中と比べて異常に大きい。異常に大きすぎるのである。
で、ここからが本題である(前置きがやたら長い男)。実のところコープは論文中で保存されていた神経弓に関して、"total elevation of the neural arch preserved, 1500 m"としている。「m」は「mm」の誤植(ソードマスターヤマトじゃあるまいし…)とされていたが、さらに「1500」が「1050」の誤植であるとすれば、どうだろう。
コープの論文の図と、A.フラギリムスの神経弓の他の計測値(が正しいとして)とを比較した時に、神経弓の高さを1500mmとすると、いまいちかみ合わない。神経弓の高さを1050mmとしてやったほうが、図と計測値がよりかみ合う(依然として一致はしない)のだ。
なんだかんだ言っても、A.フラギリムスの標本は現存していない。コープ自身詳しい記載をおこなっていないし、そもそも神経弓のスケッチ自体荒っぽいものである(さらに言うと、ドリプトサウルスの尾椎をかなり適当に(しかし、それっぽく)書いた前科のあるコープである)。ゆえに、「1050」が本来あるべき計測値なのかは多分永久にわからないだろう。とはいえ、神経弓の高さを1050mmと仮定してやると、「現実的」な推定全長がはじき出されるのは確かである。