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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

むかわ町のハドロサウルス類について妄想するコーナー

↑函淵層群産ハドロサウルス類の産状。関節している点に注意。むかわ町立穂別博物館より

ご存知の方もおられるだろうがこういう報道が出た。以前にもむかわ町のハドロサウルス類について書いてはいるのだが、せっかくの機会なので(リノレックスRhinorexは多分今後数か月のうちに取り上げるでしょう、だがその他一切のことはわかりません!)いろいろ書きたいと思う。

 むかわ町のハドロサウルス類は昨年秋に1次発掘を終えており、その時点でほぼ完全な右後肢、左後肢の膝から下、中位尾椎24個とそれに関節する血道弓、座骨、そして遊離歯が発見されている。特筆すべきはその産状であり、後肢と尾はそれぞれ関節した状態であった(関節していたのは非常に大きい。ばらけた状態であれば、下手をしなくても尾椎の同定がおぼつかなくなる)。現状2次発掘の途中ではあるのだが大量の歯が発見(どういう産状なのかは知らないが)されており、いよいよ頭骨発見の可能性に期待がかかる。
(とはいいつつも、頭骨がなぜか見つからない可能性はもちろんある。もっとも、その場合タフォノミー的にかなり面白いことになってくるのだが)

 予察的な研究ではすでに尾椎の独特の特徴が指摘されており、新たな種であるらしいことを示している。また、尾の形態からサウロロフス亜科Saurolophinaeに属する可能性も指摘されている。このあたりは頭骨の発見ではっきりするだろう。大腿骨の長さはおよそ1.2mであるといい、比較的大型の恐竜であることを示している(ハドロサウルス類としては標準的な大きさである)。
 
 さて、まだまだ発掘の途中であるが、とりあえず妄想にとどめておく分には怒られないだろう。果たしてむかわ町のハドロサウルス類はどのような恐竜だったのだろうか。報告書などでは暫定的にオロロティタンの骨格図を流用しているが、サウロロフス類であることが確かなら、これは妥当ではない。

 7200万年前、すなわちマーストリヒチアンの最初期(もっとも、実際にはカンパニアンの最末期と微妙なところだろう)のハドロサウルス類についてざっと俯瞰してみたいところだが、実はこの年代というのは非常に微妙である。絶妙に絶対年代の間をすり抜けていくのである(というより、カンパニアンとマーストリヒチアンの境界というのはころころ年代が変わるのである。上述の72Maという数字はおそらくカンパニアン―マーストリヒチアン境界から導かれたものだろう)。
 細かい話をし出すと訳が分からなくなるのでひとまず置いておく。カンパニアンの終わりからマーストリヒチアンの初めを代表するハドロサウルス類として、エドモントサウルスやプロサウロロフス、サウロロフス、クリトサウルスといったおなじみのサウロロフス類や、ヒパクロサウルスやヴェラフロンスといったランベオサウルス類などがあげられる(マイナー種は割愛)。アジアやヨーロッパ産のマイナーなハドロサウルス類(科)はちょうどこの辺の化石記録に乏しかったりする。

 この時期のサウロロフス類でアジアとゆかりのあるものというと、サウロロフス(アングスティロストリス)やバルスボルディア(再研究でサウロロフス亜科になってしまった)があげられる。どちらも内陸のモンゴル産であり、さらに言えばおそらくむかわ町のハドロサウルス類よりも200万年ほど新しいと思われる。
 ざっと見る限り、むかわ町のハドロサウルス類の尾とサウロロフス・アングスティロストリスの尾は趣が異なる。むかわ町のハドロサウルス類の尾の棘突起はあまり高くなく、比較的「寝て」いる。サウロロフス族にこだわるなら、北米産であるプロサウロロフスやサウロロフス・オズボーニの方が近そうだ。

 結局のところ、これ以上論じても仕方がないところである(なにせ妄想なのだ)。筆者としてはブラキロフォサウルス族やクリトサウルス族(アジアでは未発見)だったりすると面白い気がするが、サウロロフス族よりは地味な気もして、いまいちウケが悪そうな気はする。