いい加減過去何度もこの恐竜については(色々な理由から)取り上げてきた本ブログではあるが、ちょうどいい機会である。改めて適当にgdgdと書いておきたい。
このむかわ産ハドロサウルス類(長いので以下むかわ竜)はご存知の通り、蝦夷層群函淵層(産出層準はちょうどマーストリヒチアンの最初期にあたるようだ)から、体の右側を下にした状態で、尾(の少なくとも中ほど)から頭まで、「おおむね」関節のつながった状態で発見された。全身が(ある程度とはいえ)関節した状態で産出する例が稀なのは言うまでもないのだが、驚くべきことにこのむかわ竜が埋まっていたのは比較的沖合(外側陸棚)の堆積物(水深80m~200m程度)だったのである(函淵層はむしろ全体として浅海の堆積物が多い点に注意)。
むかわ竜は尾の後半部(侵食によって失われたのだろう)を除いて全体としてまんべんなく骨が残っている(前後肢がほぼ完全なのは嬉しいポイントだろう)。一方で、部位によって保存状態に差があることが写真からはっきりと見て取れ、陸からだいぶ(原形を留めたまま)流されてきた後、海底に沈んでから完全に埋積されるまでしばらくかかったらしいことがうかがえる。様々な生痕化石が表面に残されている可能性もあり(クリーニングで粉砕するというヘマはするまい)、タフォノミーは非常に興味深いところである。
むかわ竜の分類については少々厄介なところで、研究初期(まだ関節した尾椎しか確認されていなかった次点)ではサウロロフス亜科(ハドロサウルス亜科)に属する可能性が指摘されていた―――のだが、その後ランベオサウルス亜科に属するらしいことがささやかれるようになった(しばしばメディアに取り上げられる際に用いられた骨格図はオロロティタンだったりもした)。一方で、今回のプレスリリースによれば(ランベオサウルス亜科の特徴をもっているものの)サウロロフス亜科に属する可能性が高いという。頭骨が部分的だったり座骨の遠位端が欠けていたりで決定打に欠ける感じがあるのだが、むかわ竜のスレンダーな上腕骨は、確かにサウロロフス亜科的な雰囲気ではある。
研究初期から言われていた通り、むかわ竜の全長は8m程度と(ハドロサウルス類にしては)ほどほどのサイズのようだ。頬骨(幸いほぼ完全なようだ)のサイズからして頭は(サウロロフス族やエドモントサウルス族とは違って)さほど大きくはないように見える。四肢はハドロサウルス類としてもかなり長いように見え、特に後肢の長さが目に付く。頭のサイズと相まって、ハドロサウルス類としてはかなりすらりとした体型だったのかもしれない。