GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

”アラモティラヌス”覚書

 以前の記事などでも簡単に触れたが、アメリカ・ニューメキシコ州のオホ・アラモ層産のティラノサウルス類が“アラモティラヌス・ブリンクマニAlamotyrannus brinkmani”として命名されるようである。昨年(2013年)秋の時点で記載論文はどうやらin Pressとなったらしく、とある論文(不幸にしてフリーではない)の参考文献リストにちらほら見え隠れしている。

 オホ・アラモ層では以前からティラノサウルス類の化石が採集されており、cf.ティラノサウルス・レックスcf. Tyrannosaurus rexと同定された過去もある。一方でここ数年ではティラノサウルス科の未定種Tyrannosauridae indet. とされていた。
 採集された化石のうち特筆すべきものとして、歯骨(や部分的な椎骨、歯:NMMNH P-7199)や肩甲烏口骨SMP VP- 2105があげられる。
 歯骨の保存状態はよくないといい、現時点では図示されていないのだが、何しろ頭骨要素である。肩甲烏口骨の保存状態は比較的(あくまでも比較的、だが)よく、スー並みの大きさがあるらしい。非常に大型のティラノサウルス類であったというわけである。一方で、単離した趾骨は、オホ・アラモのティラノサウルス類がティラノサウルスよりもきゃしゃであったことを示唆している(もっとも、この趾骨が幼体や亜成体のものである可能性は掃いて捨てるほどあるわけだが)。

 別に筆者は未発表の論文をこっそり読めるような立場の人ではないので、これ以上大した情報は得ていない。直近の論文(Jasinski, Sullivan and Lucas, 2011)では特に新発見の情報などは載っておらず、“アラモティラヌス”が新標本に基づくのか、既知のオホ・アラモ層産の化石に基づいて命名されるかは謎である。
 アメリカ南西部のティラノサウルス類はここ数年でようやく命名されており、マーストリヒチアンのものに関しては(化石が乏しくて手の出しようがなかったのは事実だが)あまり研究が進んでいなかった。“アラモティラヌス”の記載が突破口になればいいのだが…。