復元骨格とは頸椎や胴椎(そして肋骨)の相当部位が異なっている。参考にした資料と実際の復元骨格とどちらが妥当か筆者には判断する術がない
なんだかんだで骨学的な記載はほとんどされていない標本である。よって、上の図はかなりアバウトな代物である(一応、特に頭骨に関しては恐竜学最前線④の図を元に、写真と比べて修正してみたりとそれなりには頑張ったのだが)。
本標本はカナダはアルバータ州のウィロー・クリークWillow Creek層からの発見である。実のところウィロー・クリーク層の発掘調査はあまり進んでおらず、レプトケラトプス科の角竜(文献によってレプトケラトプスLeptoceratopsの一種だったりモンタノケラトプスMontanoceratopsの一種だったりするのだが、プレノケラトプスPrenoceratopsに近い特徴もあるという。少なくとも新種なのは間違いないだろう)が発見されている程度である。
古くは(とはいっても20年ちょっと前の話である)、「メスの若い成体」などと言われた本標本であるが、実際には「オスの若い成体」であるらしい(もっとも、この「性的二形」は、実のところ性別による違いではないらしい……いずれ、きちんとこの話はブログで取り扱うだろう)。享年18歳(性成熟年齢)である。
(写真はwikipediaより)
非常にわかりやすいデスポーズなのだが、実際これがどの程度「産状」であるかは微妙なところである(ほぼ「人工」のような気がする)。尾と腰はほとんど発見されていないし、頭骨は半ばばらけた状態で発見されているのだ。
この手の話は稀によくある(ブロント語)。有名なカーネギー博物館のカマラサウルスが実際の産状から「見栄えを良く」してあることはあまり知られていない(気がする)。バックヤードならともかく、博物館の表舞台に立つ以上は少なからず芸術品としての側面を背負うのが化石である。化石のクリーニング・修復と「加工」は表裏一体なのだ。
組立骨格だとなおのこと、本標本の恥骨は短く見える。一見すると実際に発見されているようにも見える腰帯だが、どうもこれはRTMP 81.12.1のレプリカを流用しているらしい。実際のところは、上の図のような腰帯であっただろう。(RTMP 81.12.1の恥骨がやたら短いのは、単にブーツの縁が欠けているだけのように思える。資料に乏しいのでそのあたりはよくわからないが…)
そんなわけで、いつも通りまとまりも何もない記事である。カナダ産の貴重なティラノサウルスの標本のひとつであり、そういう側面からも脚光を浴びていいような気はする。