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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

コアウィラケラトプス

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↑左:コアウィラケラトプスの頭骨(模式標本CPC 276、若い成体?) 
 右:亜成体ないし大型幼体の歯骨(CPC 277)
スケールは1m

 20世紀の初めごろからメキシコでの恐竜発掘は始まっていたのだが、詳細な研究がおこなわれるようになったのは半ば過ぎのことである。
 メキシコはコアウィラ砂漠に露出するセロ・デル・プエブロCerro del Pueblo層(カンパニアン末期~マーストリヒチアン初期、7250万~7140万年前)は古くから発掘が行われていたのだが、最近になるまで目立った化石の産出はなかった。最近になって初めて2種のハドロサウルス類(ヴェラフロンスVelafronsとラティリヌスLatirhinus)、そしてコアウィラケラトプスが記載されたのである。

 コアウィラケラトプス・マグナクエルナCoahuilaceratops magnacuernaはもともと2008年ごろには記載されるはずだったらしいのだが、結局もろもろの事情で正式記載は2010年にずれ込み、筆者のような角竜スキーをやきもきさせた。
 同じサイトから2体(CPC 276とCPC 277)が発見されており、(規模はともかく)群れらしきものを作っていた可能性が示唆される。論文中で記載されたのは頭骨要素だけだったのだが、実際には276、277ともに体骨格も発見されているという。

 目につくのはやたらデカい上眼窩角である。頭骨に対する相対的な長さでは角竜でも屈指であり、アンバランスですらある。
 化石が不完全なこともあり、フリルの形態はいまいちはっきりしない。上図では近縁とされるブラヴォケラトプスBravoceratops過去記事参照)っぽくしてみた。
(ちなみに記載論文の頭骨図とキャプションとでは、鱗状骨の記述に思い切り矛盾がみられる。論文の図はわりと予察的なもののようだ)

 ガストンデザイン(諸般の事情により筆者の中での株はダダ下がり中…そんな復元で大丈夫か? 大丈夫だ、問題ない)によって復元骨格が製作されている。首がやたら寸詰まり(肩帯の位置だけじゃなくて、後頭顆の位置がおかしくないかこれ?)ほかはまずまずの出来のように見える。

 系統的な位置は若干不安定だが、そこそこ派生的なカスモサウルス類という点では一致している。最新の分岐図(ブラヴォケラトプスの記載論文にて提唱されたもの)では、ブラヴォケラトプスと姉妹群をなし、アリノケラトプスとトリケラトプス族Triceratopsiniの間におさまっている。(ティタノケラトプスの有効性はどうあれ)トリケラトプス族の南方起源説を補強するかもしれない。

 なお、セロ・デル・プエブロ層からは他に未命名のセントロサウルス類(“メキシコ産モノクロニウス”を含む)や、奇怪な角竜(予察的な報告ではセントロサウルス類とされていたようだが…現在は不定のケラトプス類とされている)も発見されている。
 目下(よく研究された)ケラトプス科角竜の産地では最南端に位置することもあり、今後の研究が楽しみである。