↑上段より、ユタケラトプスの復元頭骨、発掘された頭骨要素(上面)、頭骨復元図(上面)、頭骨復元図(側面)、発掘された頭骨要素(側面、頭頂骨を除く)
さて、あと1ヶ月で大阪のトリケラ展なわけである。ぼちぼちペースアップして(?)、大阪のトリケラ展にて展示されると思しき角竜を紹介していきたい。
コスモケラトプス(以前の記事を参照)の発見されたカイパロウィッツKaiparowits層では、このほかに2種の大型角竜が発見されている。ユタケラトプス・ゲティイUtahceratops gettyiと、ナストケラトプス・タイタシNasutoceratops titusiである。今回はユタケラトプスについてざっと解説したい。
カイパロウィッツ層の大規模調査の経緯やら何やらの紹介はコスモケラトプスの回を参照していただくとして、何はともあれ2000年の秋にユタケラトプスの最初の化石が発見された。その後2007年までの間に計6ヶ所でユタケラトプスが発見され、そのうち1ヶ所では少なくとも3体からなるボーンベッドとなっていた(このことは、規模はともかく何らかの群れを作って生活していたことを示唆する)。本種の産出層準は7640万~7550万年前とされており、コスモケラトプス、さらにナストケラトプスと年代がオーバーラップしているのが興味深い。時期によっては、3種の全く異なる大型角竜が共存していたということだ。
複数個体の寄せ集めではあるが、頭骨要素はほぼ全て発見された(上図)。また、体骨格も寄せ集めでこそあれ多くが発見され、復元骨格(首が寸詰まりなのがやはり気になる。肩甲骨の位置に関しては、レイモンドでもずれてる可能性を藤原先生が指摘してたんですがそれは…)も最近になって製作された。
さて、全体として頭骨の形態はペンタケラトプスによく似ているが、退縮した上眼窩角が横に倒れる点でユニークである。また、鼻角が生える位置がかなり後ろの方(鼻孔の後ろ)であることも、地味ながら本種の重要な特徴である。縁頭頂骨の形態が化石と復元頭骨とで異なるのが気になるが、これはおそらく、クリーニングが完了しきらないうちに復元頭骨を製作したことによるものであり、正確な方は(当然)化石と、頭骨復元図になる。
系統的にはペンタケラトプスと姉妹群をなす。未記載ではあるが(結局去年も記載されなかった)、cf. Ceratops montanusとも似ているように見え、近縁なのかもしれない。
目下確認されているかぎりでは(学者間でコンセンサスが得られているものとしては)、カイパロウィッツ層は唯一3種類のケラトプス科角竜が共存していたことを示す地層である。何らかの形ですみわけ・食べわけがなされていたことは容易に想像できるし、あるいはほかにも要因があるかもしれない。
このような状況がカイパロウィッツ層限定かどうかは今のところはっきりしておらず(研究次第では、ヘル・クリーク層もそのような環境かもしれないが)、その辺りも含めてこの角竜の発見は重要な意味をもっている。