↑エオトリケラトプス・クセリンスラリスEotriceratops xerinsularisの骨格復元図 模式標本TMP 2002.57.7を示す。スケールは1m
最後の角竜にして非鳥類恐竜の進化の頂点の一つに達したトリケラトプス(とトロサウルス)の出現前夜、すなわち白亜紀後期マーストリヒチアン前期~中期(7200~6700万年前)にかけて、それらの祖先―――プロトタイプとでもいうべき角竜がいくつか存在した。今回は、その中でもエオトリケラトプスについて紹介したい。
エオトリケラトプスというやたらと長い属名だが、これは「夜明けのトリケラトプス」といった意味合いになる。系統的にエオトリケラトプスはトリケラトプス―トロサウルスの祖先(トリケラトプスの直接の祖先である可能性がある)とされており、それを踏まえてのネーミングである。
カナダ・アルバータ州のドライ・アイランド(種小名の「クセリンスラリス」は、「乾いた島」つまり模式産地を示している)の、ホースシュー・キャニオンHorseshoe Canyon層最上部(6800~6760万年前6927万年前~6837万年前に改訂された模様)から、部分的な頭骨と骨格の一部が発見されている。
目下模式標本TMP 2002.57.7のみが知られており、復元頭骨が製作されている。非常に大型の角竜であり、体骨格も見つかっているものとしては最大級であろう。
化石は部分的に関節していたが、保存状態は正直かなり悪い。挙句に地圧でぺしゃんこになっていた。
頭骨は主要な要素が揃っていた(が、頭頂骨がほとんど残っておらず、フリルに穴があったかは不詳)が、いかんせん保存状態があまり良くなかったこともあり、様々な復元が提唱された。ネットでは「長さ3mの頭骨」という表記をよく見かけるが、せいぜい2.7m(復元頭骨の長さ)がやっとであろう。今回論文の図を参考に復元したところ、2.5mほどになった。
長い上眼窩角と短い鼻角の組み合わせは、トリケラトプス・ホリドゥスとよく似ている。一方で、鱗状骨(フリル側面)や前上顎骨の形態は独特である。また、発達した縁頬骨は、トロサウルス(や、より原始的なカスモサウルス類)によく似ている。縁鱗状骨の形態(非常に平べったい)も本種独特である。
上眼窩角の基部(というか目の直上)には肉食恐竜の噛み跡が確認された。どのタイミングかはわからないが、アルバートサウルスか何かにがっぷしと噛みつかれたらしい。
頭骨の主要要素は癒合しておらず、TMP2002. 57. 7は恐らく亜成体である。ここからはほとんど(サイズ的には)成長しなかったと思われるが、それでもこの図体で亜成体のようだ。
体骨格は上半身の一部であり、おまけに保存状態も悪い。どうにかトリケラトプスと比べると、癒合頸椎がやや短いようである。そこはかとなくトリケラトプスよりも首が短かったということらしい。(ただ、いかんせん保存状態が悪かったり、「個体差」の範疇に入る可能性もあるので、正直微妙なところ)