むかわ竜のマウントは先日一瞬だけ(ほんの数時間で削除されたあたり、「うっかり」だったのだろう)8割がた組み上がった状態の映像がネットニュースに流れたりもしたわけだが、今回公開されたのは塗装も済んだ完成版(たぶん)である。見ればわかる通りアーティファクトは吻と仙椎、遠位尾椎のみと最小限に留められており、雰囲気のいい塗装と相まって、純骨並みの迫力である。結局(少なくとも今回のバージョンは)アーマチュアが外装式とはいえキャストで組み上げられたわけだが、これはむしろ(当然)英断といえるだろう。
胸郭の幅が広すぎるのは明らかに胴椎と肋骨の変形のせいのようで(肋骨自体、数は揃っているものの(おそらくほとんどが発掘の過程で)粉々になっている状態である)、本来であれば胸郭はより幅が狭く、烏口骨は(左右で関節することはむしろあり得ないのだが)より正中に近づくはずである。
頭部のアーティファクトはエドモントサウルス準拠のようで(小顔とはいえ、頬骨の形は確かにそれっぽいのである)、吻は(推定される範囲内としては)めいっぱい伸ばして復元されているようである。吻が出ていない以上何とも言えないわけだが、今回の復元骨格より吻が長いということは多分ないだろう。
デイノケイルスのマウントは塗装前というか見るからに未完成なのだが(右の腰帯ができあがっていないようで、頸椎なども内装式アーマチュアの「フタ」がまだ取り付けられていない。もっとも、化石の色がネメグト層でよくある白っ茶けた色なので、塗装したところでここから特別印象は変わらないはずだが)、その全容を知るのには十分である。「新標本」のうち成体の方のキャストをベースに、ホロタイプ(新標本の成体の方と誤差の範囲で同サイズなわけだが)と幼体の要素をサイズ合わせして組み込んでいるようだが、サイズ合わせはうまくいっているようで、「コンポジット感」は全くない。
未記載のむかわ竜はさておいてもデイノケイルスの「新標本」の写真の露出はこれまで頭骨を除けば椎骨数点と腰帯、脛などに限られていたわけで、マウントの出来が普通によかった(スゴイ・シツレイ!)のはともかくとしても、今回の情報解禁は素直に嬉しいところである。左膝には母岩のブロックが付いたまま(キャストが取られた)なわけだが、これは胃石の密集したブロックだという消息筋の話である。
むかわ竜にせよデイノケイルスにせよすんなりマウントが組み上がるわけではない代物だったわけだが、蓋を開けてみれば水準以上の出来だったわけで(このあたりゴビサポートは昔からよい仕事をしていたわけなのだが)、恐竜博2019の展示については(勝手に)一安心である。気が付けば開幕までもう3ヶ月を切っており、楽しい夏まで指折り数える日々はもうとっくに始まっている。
閑話休題、本ブログに長年お付き合いいただいている読者のみなさまは散々ご存知の通り、げったうぇーとらいく!の白々しい内容の記事には必ず裏があるわけである。備えよう。