GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

SVPの私的まとめ2016

 さて、ソルトレークシティーSVP2016がとりおこなわれたわけである。様々な新報告があったわけだが、例によって筆者の趣味の部分について備忘録代わりに書いておきたいと思う。

トリケラトプスのボーンベッド
 かつてトリケラトプスのボーンベッドといえば見つからないものの代名詞であった(そんなことはない)のだが、ここ10年余りでいくつか発見されるようになってきた。今回報告されたランス層のトリケラトプスのボーンベッドは、様々な成長段階の個体を(年取った幼体ないし若い亜成体から成体まで)少なくとも5体(うち1体は同じ場所の4m上位から採集されたというのだが)含んでおり、頭骨に加えて首から後ろの骨格要素も豊富に含んでいるという。何かと今後が楽しみである。

メデューサケラトプス再記載へ
 以前にも少し扱ったネタである(ジュディスリバーはお約束のネタになって久しい)が、メデューサケラトプスの形態・分類の見直しが日本人研究者によって進められている。結局のところメデューサケラトプスは基盤的なセントロサウルス類であり、マンスフィールドのボーンベッドで発見された角竜はすべてメデューサケラトプスとみなしてよさそうである。これも出版が非常に楽しみである(その暁にはまたジュディスリバーの記事を書くことになるだろう)。

・リムサウルスの歯
 リムサウルスといえば「歯なし」で有名だが(そもそもマイナーな気がするのは気にしない)、一生を通してみるとそうでもなかったらしい。リムサウルスのボーンベッドに含まれていた幼体は「肉食の」歯をもっており、成長とともに歯が失われていったらしいこと(そして食性も変化していったらしいこと)を示唆している。

・ディストロファエウス再生
 ディストロファエウスDystrophaeusと聞いてピンとくる読者の方はそう多くはないだろうが、コープによって部分骨格に基づき命名された、モリソン層を代表する問題児の竜脚類のひとつである。最近になって模式産地(モリソン層はティッドウェルTidwell部層の下半にあたる)の再調査が行われ、模式標本と同一個体らしい骨格の「残り」が発掘・研究されつつある。これまでディストロファエウスの系統的な位置づけは全く定まっていなかったのだが、「模式標本の残り」はこれがディプロドクス科ではないことを示しており、今後の発掘・研究が楽しみである。

・北米産アンキロサウルス科の怪
 少し前にがっつり記事にした北米産アンキロサウルス科がまた不穏な動きを見せている。ペンカルスキ(オオウコトキアの命名者)による個体レベルでの系統解析(!)は、スコロサウルス属の新種とディオプロサウルス属の一種(種不明)がダイナソー・パーク層の上部に存在したことを示唆しているという。また、アンキロサウルスに似た皮骨板がダイナソー・パーク層の下部から、妙な形態の尾椎をもつ種がジュディス・リバー層から産出しているという。また、ペンカルスキの弁によればオオウコトキアはスコロサウルスとは上腕骨や仙椎、ハーフリングやそのほかの皮骨の形態で区別できるという(さらにオオウコトキアの方がスコロサウルスより小さく、時代が新しいともいう)。まだまだ面白いことになりそうだ。



 以上、完全に筆者の独断と偏見で取り上げたわけだが、面白そうなネタは他にいくらでもある。とりあえず好きなキーワードアブストラクトの中を検索するといいだろう。