GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

gdgd骨学 角竜その2

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トリケラトプス・ホリドゥスの骨格図。様々な部分的な資料に基づく。
頭骨とプロポーション、大きさはTCM 2001. 93. 1に合わせてある。
スケールは1m

 その1を書いてからだいぶ経ってしまったのだが、どっこい第2弾である。前回と同様、骨学何それおいしいの?な筆者が書いているので、自分で調べることをおすすめする。

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↑派生的なカスモサウルス類であるトリケラトプスの体軸骨格(+α)

椎骨
 ケラトプス科角竜の椎骨には含気孔はみられない。図では省略したが、(種によっても差がある可能性はあるが)胴椎の初めから前位尾椎にかけて骨化腱ossified tendonsが棘突起に付着している。ゆえに、骨化腱の付着している椎骨については可動性はほぼなかったと考えられる。種によっては中位胴椎の棘突起が(やや)高くなる。
 一般に、ケラトプス科角竜の椎骨は頸椎9(うち第1~第3頸椎が癒合)、胴椎12、仙椎10で構成される。ただし、ペンタケラトプスでは頸椎9、胴椎12、仙椎11となっている。また、カスモサウルス亜科の未確定種CMN 8547(いわゆる「アンキケラトプスの全身骨格」)では頸椎10(1~4が癒合)、胴椎13、仙椎12で構成されている。尾椎の数についてはっきりしている種は限られているが、とりあえず種間変異が存在する(セントロサウルスや“ブラキケラトプス”で46個、CMN 8547で38ないし39個である。トリケラトプスは恐らく39個前後)。
 後位の頸椎は実質的に「胴椎化」しており、可動性はないと言ってよいだろう。

血道弓
 めったに発見されず、特筆すべき特徴もない。血道弓は比較的短く、恐竜の中でも屈指の短さを誇る尾と合わせて、あまり筋肉の付着点としての役には立っていなかったことが考えられるだろう。

肋骨
 第2頸肋骨は癒合頸椎と癒合する場合がある。後位の頸肋骨は実質的に「胴肋骨化」している。後位の頚肋骨と前位の胴肋骨はほぼ垂直方向に伸び、幅の狭い胸郭を形成する。中位以降の胴肋骨は大きく左右に広がり、幅の狭い胸郭と合わせて上から見た時に「なすび型」に見える体を形成する。最終胴肋骨は恥骨と関節する。

腰帯
 腸骨は非常によく発達しており、強力な筋肉が付着していたことを物語る。恥骨は大きく左右に広がり、先述の通り最終胴肋骨と関節する。後恥骨突起はかなり退縮しており、保存されることは比較的まれである。座骨は下に向かってカーブし、特にカスモサウルス亜科で連続的な下方へのカーブが認められる。セントロサウルス亜科ではややカーブが弱い。

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↑左:正面から見たトリケラトプスの胸郭
中央:トリケラトプスの左肩帯・前肢。内側から見た手骨格を左下に添えてある
右:スティラコサウルスの左手

肩帯
 肩甲骨はかなり頑丈な作りをしており、成長の過程で烏口骨と癒合する。肩甲骨の正確な関節位置についてははっきりしていないが、第3胴肋骨の上端と肩甲骨の上端が重なるようである。
 烏口骨と胸骨はそれぞれ正中で関節する。幅の狭い胸郭と相まって、肩の幅はかなり狭い。「肩甲骨スライド仮説」については、未だに定まっていない(というより、議論すらあまりなされていない)のが現状のようだ。

上腕骨
 三角胸筋稜が突出しており、強力な筋肉の存在を示唆する。また、これによって前腕を左右に広げる動きが妨げられていたと思われる。(つまり、「はい歩き」は難しい)

橈骨・尺骨
 橈骨・尺骨共に頑丈な作りである。橈骨の方がきゃしゃに見えるが、体重支持に占めていた役割はこちらが主である。尺骨の肘頭突起は大きく発達しており、下方型の姿勢を取っていたことを示唆している。

手骨格
 手根骨はごく小さなものが2つ存在するのみである。中手骨は短いが、特にⅠ~Ⅲ指のものは頑強にできているようだ。第Ⅰ中手骨は第Ⅱ中手骨の側面に回り込んでおり、外側面から見ると第Ⅱ中手骨の陰に隠れる。指式は2-3-4-3-2であり、第Ⅰ~第Ⅲ指の末節骨は大きく蹄状に発達する。第Ⅳ指と第Ⅴ指の末節骨はごく小さく、爪は存在しなかったと思われる。第Ⅳ・Ⅴ指は基本的に接地せず、もっぱら第Ⅰ~第Ⅲ指で体重支持をおこなっていた。足跡化石によっては比較的指の跡がはっきりしており、ミトン状の手にはなっていなかったと思われる。

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↑左:トリケラトプスの右後肢(内側面)
中央:トリケラトプスの大腿骨・脛距骨およびスティラコサウルスの足骨格
右:トリケラトプスの左後肢(外側面)

大腿骨・脛骨・距骨・腓骨・踵骨
 全体としてしっかりした作りである。大腿骨の転子はあまり目立たない。脛骨は幼体であっても大腿骨よりも短く、ティラノサウルス類のような劇的なプロポーションの変化は起こらなかったようだ。距骨は脛骨と癒合する場合もあるらしい。腓骨は単純なシャフト状である。踵骨は第Ⅳ中足骨との関節面を形成する。

足骨格
 3個の足根骨が存在する。中足骨は比較的短く、第Ⅴ中足骨が痕跡的ながら残っている。趾骨(末節骨含む)の数は2-3-4-5-0である。末節骨は前肢のものと同様蹄状によく発達する。足の裏にはよく発達した肉質のパッドが存在した。


 以上、筆者の力量(やら何やら)不足をさらけ出しながら書いてみた。以前触れたHatcher et al., 1907や今回の記事で図版を引用したBrown, 1917のほか、Gilmore, 1917(ブラキケラトプスの記載論文)、Fujiwara, 2009(いわずもがな)はきれいな図が多くておすすめである。