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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

コパリオンの向こう側

 さて、トロオドン類Troodontと言えば、とりあえず白亜紀前期~後期のアジア、および白亜紀後期の北米が思い浮かぶ(ちょいちょいジュラ紀後期ごろのトロオドン類と思しき連中(アンキオルニスなど)が出ているのは皆様ご存じだろうが、正直あの辺りの系統はまだグレーゾーンが大きい気がするのでパス)。
 とは言いつつも、読者の中にはご存知の方もおられるだろう。ジュラ紀後期の北米からもトロオドン類が発見されているのである。

 ジュラ紀後期の北米と言えばモリソンMorrison層である。コパリオン・ダグラシKoparion douglassi命名された歯化石は、1993年にユタ州の恐竜国立公園の近く、モリソン層のブラッシー・ベイスンBrushy Basin 部層(モリソン層の最上部にあたる部層)から発見された。
 当時はまだ「始祖鳥以前に生息していた、鳥類にごく近縁な恐竜化石」が発見されていなかった。ゆえにトロオドン科のはっきりした特徴をもち、かつ始祖鳥とほぼ同時期に生息していた本種は極めて重要な発見であった。模式標本は遊離歯であったが、そんなこんなで命名されてしまったのである

 そんな事情もあってかコパリオンは知る人ぞ知る恐竜に留まっている。が、モリソンのトロオドン類は実のところコパリオンだけではない。

 スーパーサウルス「Jimbo」と言えば、「世界の巨大恐竜博2006」にて復元骨格がお目見えしたのでご存知の方も多かろう。ワイオミング州で発見された、スーパーサウルスの中で最も優れた化石(頭部と前肢を除きまんべんなく発見された)である。発掘のほぼ完了した2000年(ないし2001年)、Jimboの発掘サイトから1体の小型獣脚類の化石が姿を現した。
 
 骨格(推定全長は1mほど)は大部分が残されており、ほぼ完全な頭骨や四肢、複数の頸椎や尾椎などが保存されていた。「Lori」の愛称を与えられたその化石(WDC DML-001)は明らかにトロオドン科の獣脚類であった。2005年の予察的な報告ではシノルニトイデスと近縁とされている。

 Loriの正式な記載が行われていない(研究中ではあるはずだが…。手持ちの画像の中にLoriの骨格図があったりするのだが、現在ネット上からは削除されているらしかったりなんだりでここにアップするのはためらわれる。インターネットアーカイブを駆使すればあるいは…?)現状、Loriがコパリオンであるかどうかは分からない。とはいえ、(コパリオンがトロオドン類でなかったとしても)トロオドン類がジュラ紀後期の北米に暮らしていたのは確実である。
 あるいはパラエオプテリクスPalaeopteryx(知ってるかな?)の分類に関しても、何か情報が得られるかもしれない。

◆追記◆
 ようやく、というべきだろうか。Loriの研究支援のためのクラウドファンディングが始まったので、ついに正式記載へのスタートが切られたようだ。明らかに頭骨などはハートマンの(言うまでもなく暫定的な)骨格図よりよく保存されており、変形も少ないように見える。今後が非常に楽しみな標本なのは間違いない。