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恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

Qianzhousaurus sinensisあるいはピノキオ・レックス

↑チエンジョウサウルス・シネンシスQianzhousaurus sinensisの頭骨。
スケールは5cm

 しばらく前に恐竜パンテオンさんでこんなニュース(ちょっとスクロールさせると出てくる)があったわけである。現地報道を見る限り素晴らしい保存状態だったわけで、記載を楽しみにしていた方も多かったであろう(断言)。

 というわけで、報道ではもっぱら「ピノキオ・レックス」という名前で紹介されているが、これはあくまでも愛称である。学名と混同しないように注意されたい。
 この記事を書いている時点で、筆者はアブストラクトしか読んでいない(ネイチャーなので、そのうち大学で読めるであろうサイエンスしか置いてないなんて、おかしいですよ、カテジナさん!)。その辺、情報が出次第書き加えていきたい。

 本種が発見されたのは中国は江西省、南雄Nanxiong層である。(Yuanpu層と呼ばれる場合もあるらしい。Yuanpu層は南雄層の下のようでもあるのだが…)
 中国でも数少ない白亜紀最末期(マーストリヒチアン後期、6600万年前)の地層であり、近年オヴィラプトロサウルス類(ナンカンギアNankangiaやバンジBanjiなど)やティタノサウルス類(ガンナンサウルスGannansaurus)が相次いで記載されている。どうやら本種はナンカンギアと一緒に発見されたらしい。

 チエンジョウサウルスはアリオラムスAlioramusに酷似している(ホルツはアリオラムス属の新種である可能性を指摘している)が、遥かに大きく全長は8~9mほどとされている。
 アリオラムス属の既知の標本はいずれも亜成体だったのだが、本種の模式標本は“ほぼ”成体であると判断された。アリオラムスに関しては(最近は下火になったとはいえ)タルボサウルスの幼体説も付きまとっていただけに、この発見は重要だろう。要するに、成体であっても吻の細長い中大型のティラノサウルス類の一群が存在したということである。

 アリオラムスに関しては最近の研究でティラノサウルス科の外に出してしまう意見が出ていたのだが、今回の論文ではチエンジョウサウルスと「アリオラムス族Alioramini」としてアルバートサウルス亜科AlbertosaurinaeとテラトフォネウスTeratophoneusの間に置かれている。

 模式標本は骨格のかなりの部分を含んでいる。ほぼ完全な頭骨や頸椎~胴椎、中位~遠位尾椎(それぞれ関節している)、腸骨、後肢の大部分であり、保存状態はかなり良い。そのうち復元骨格が製作されるであろう(もう製作されているかもしれない)。
 ほぼ成体とはされているが、本種の眼窩はやたらデカい。やや変形しているようだが、発達した涙骨と後眼窩骨の突起と相まってなかなかのインパクトである。