GET AWAY TRIKE !

恐竜その他について書き散らかす場末ブログ

「最大のトリケラトプス」

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(↑ MWC 7584(BYU 12183) スケールは1m。写真から書き起こしたものなので正確性には自信がない)
 さて、ここ10年あまりで「トリケラトプスの全長」が小さくなっていることにお気づきの方もいるだろう(断言)。(先日逝去された金子隆一氏の著作などによって)最大で15mと言われていた時期もあったが、最近では大きくて9m、下手をすると「6~7m」である。
 全長15m説の根拠となっていた(と思われる)、巨大なトリケラトプスの頭骨が2つほど知られている。1つがCMN(NMC) 8862―――“トリケラトプス・アルバーテンシス”の模式標本、そしてもう1つがBYU 12183(所蔵博物館が変わり、現在ではMWC 7584となっている)である。

 CMN 8862は、部分的な頭骨(左側面のみ)と、胴椎2個、肋骨少々からなる。数少ないカナダ産(アルバータ州、スコラード層産)のトリケラトプスであり、1949年に記載されている。吻部(含む鼻角)がそっくり欠けており、フリルの保存状態もあまり良くないためにはっきりしないが、復元すれば3m近くになるのではないかと言われている。(恐竜学最前線⑥ p.28参照)
 残念ながら展示は行われていないようである。学名が疑問名とされたこともあり、現在のステータスは微妙なところである。(写真を見る限り、T. ホリドゥスかT. プロルススかは分からない。ネドケラトプスのようにすら見える)

 保存状態がより良いのがBYU 12183(現MWC 7584、以降BYU標本と表記)である。1963~64年に「あの」ジェームズ・ジェンセンとブルース・エリクソンによってモンタナ州フォート・ペック(のヘル・クリーク層)で採集された巨大な頭骨である。左右の上眼窩角とフリルの後半部は風化によって失われていたが、他は完全であった。鉱化が進んでおらず「朽木のようにもろい」状態だったため、複数のキャストが製作されたのち、ブリガム・ヤングの収蔵庫でジャケットを付け直してほこりをかぶっていたようである。最近になって西コロラド博物館(のDinosaur Journey Museumだとかなんとか)に移され、晴れて実物が展示されることとなった。
 記載がなされていないこともあり、BYU標本がトリケラトプスの2種類あるうちのどちらの種となるかについてはよく分からない。鼻角が長いというのはT. プロルススによく見られる特徴だが、プロルススにしては(多少変形はしているかもしれないが)吻が長いように思える。BYUの展示キャプションではT. ホリドゥスとされている。
 肝心の大きさであるが、例のホーナーらによる「トリケラ‐トロ論文」の中では(復元した)長さ2.5mとされている。一方で、BYUなどの展示キャプションなどでは2.7mとされている。(ファルケによれば、Basal Skull Lengthは1.2mであるというが、彼の言うBasal Skull Lengthには2種類あるようで、長い方のBSLなのか短い方のBSLなのかはよくわからない。個人的には、長さ2.7mの方が信憑性が高い気がする)

 というわけで、ようやく本題である(遅い)。トリケラトプスの骨格図に上述の頭骨の長さを当てはめてやると、全長(BSL+カーブに沿って測った椎骨の長さ)はおよそ8m~9mほどとなる。何をもって15mという数字が出てきたのかは定かではないが(情報求む)、さすがにこれは大きく見積もり過ぎていたようだ。「全長6~7m」は、全長の測り方の違い、あるいは単に全身骨格のみに基づいて算出したということだろう。
 今回挙げた標本の他にも、極めて断片的ながらこれらに匹敵するであろう巨大なトリケラトプスらしき化石が知られている。それについてはまた後の機会としたい。