更新をほったらかしていたらあっという間に8月である。本来なら今夏も色々あるはずが中止やら延期やら規模縮小やらではあるのだが、致し方ないところではある(が、細々と告知を続けているものもある)。
福井県立恐竜博物館といえば今年で開館20周年(前身がもう少し以前までさかのぼれることは言わずもがな)であり、本来ならいつも以上に気合の入った特別展(エオティラヌス(しかもマウント)が来日するという話であり、ひょっとするとネオヴェナトルよろしく会期後に引き取るくらいのつもりだったのかもしれない)が開催される予定だったわけだが、かくして地元要素に絞った特別展と相成ったわけである。
とはいえ、さすがに20周年だけあって、規模は縮小しても相当な濃さである(このご時世なのであまり長居するものでもないのだが)。噂通り「新復元」もお目見え(まだ今後の展開が控えていそうな雰囲気があるわけだが)し、この20年間の総括にふさわしい特別展とはいえよう。そういうわけで、いつも通り(ずいぶんレポート記事は久しぶりなのだが;うっかり去年の福井レポを書きそびれた筆者である)つらつらと適当に紹介していきたい。
お約束というべきか、迎えてくれるのは海鳥達だけなのか?勝山産ゴニオフォリス類である。いい加減骨学的記載を…というのは鉄板ネタなのでここではやらない。皮骨の保存も非常に良好である。
クリーニングで少なからず損傷しているというのはたぶんそうなのだろう。
フクイサウルスの「新復元」は頭骨だけのお披露目であるが、たぶんこれには深い事情がありそうである。眼窩まわりというか頭蓋天井が別物になっており、なんというかバリグナー(の改造パーツを組み込んだ1/144のD-1)臭がする。
眼瞼骨の近位部と後眼窩骨の装飾が目を引く。前前頭骨-涙骨や上顎骨も作り直されているようだ。
今回の「新復元」の核になっているのが、数年前に発見されたこの部分骨格(同一個体由来)である。いちおうキャプションはイグアノドン類どまりではあるものの、上顎骨の形態からしてコシサウルスではありえない(とりあえずフクイサウルスとよく似ているように見える)。サイズはフクイサウルスの模式標本群とほぼ同じようで、上述の「新復元」には本標本のキャストがそのままねじ込まれているようである。
本標本のプロポーションからして、どうもフクイサウルスは(旧復元では「小顔」がウリであったわけだが)かなり頭でっかちだったとみてよさそうで(元フクイリュウのマウントの上に掲げられた復元画でもそんな感じである)、このあたり「新復元の完全版」がお披露目されるのもそう遠くないだろう。
フクイラプトルの「新復元」はなんというかハイディテールマニピュレーター(B-CLUBにはちょこちょこお世話になっていた筆者)を付けてみました感がある(実際だいぶ印象は変わっている)。
頭骨はそのまま…と見せかけて、下顎にはちょこちょこ手が入っている。
フクイヴェナトルがいちばん「新復元」らしくなっている。とはいえ首から後ろはポーズ替えに終始している。第2趾の問題は要は「始祖鳥のシックルクロー問題」と同じようなものだろう。
「旧復元」のアーティファクトが(造型的な意味で)悲惨だったわけだが、今回新要素(原記載時には同定不能だった部分)も加わって、まるっきりの別人顔である。とりあえず再記載は必須であろう。
新復元というか、今までなかったのが不思議なフクイティタンの(四肢だけではあるが)マウントである。大腿骨の破損がひどいので何とも言えない部分は残るのだが、とはいえ上腕骨はたいして長くはないタイプである。
大腿骨のアーティファクトが根性の産物であることがよくわかる。カクルめいた写真(意味不明)なのはPLフィルターの都合である。手首の処理はむずかしいところ。
第一次発掘の時から大規模な足跡(というか連続歩行痕)群が知られているわけで、さまざまな足跡種の化石も展示されている。鳥類や翼竜と、恐竜以外も興味深いところである。
小粒ではあるが、数を集めればなかなかの見ものである。フレームワークの是非はさておき普通に現生属である。
手取層群で魚類といえば桑島のイメージが強いわけだが、勝山でもちょこちょこ出ているものである。部分的だが大変美しい化石である。
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というわけでごくごくかいつまんで紹介したが、本展の恐竜の展示はもっとある(先報道発表されたスピノサウルス類の歯も含め)し、植物や無脊椎動物の化石もきっちり展示されている。縮小を余儀なくされたとはいえ、これまでの20年の振り返りと、これからの20年の始まりを告げるにはふさわしい企画展と言えるだろう。
(この手の大規模企画展についていえば、中止というより延期という文字の方が目立つ印象である。来年を待つのも手であろう。)