↑テスケロサウルス属の一連の種、および“ウィロー”ことNCSM 15728を示す。
さて、テスケロサウルスと言えば「心臓」やらなんやで有名(結局心臓ではなかったようだ)だが、最近かなり混沌とした状況になっている。いちいち書くともう色々と訳の分からないことになるので、適当にかいつまんで書いていきたい。
テスケロサウルス・ネグレクトゥスThescelosaurus neglectusの模式産地はアメリカ・ワイオミング州(のランスLance層)なのだが、北米で産出したテスケロサウルス属はほとんどが本種に分類されてきた。一応モンタナからT.ガーバニイT. garbaniiも発見されていたのだが、これに関してはほとんど無視されてきたと言ってもよい。また、比較的最近になってブゲナサウラ・インフェルナリスBugenasaura infernalisが命名され、いくつかの「大型のテスケロサウルス類」がこの種に分類された(T.ガーバニイも本属に含める考えが強かった)。
ところが、近年の詳細な研究で、ブゲナサウラは疑問名へと格下げとなった。ブゲナサウラの模式標本SDSM 7210は部分的な頭骨と足、いくつかの椎骨からなるのだが、他のテスケロサウルスの標本との比較(による、学名の有効性の立証)が困難だったのである。T.ガーバニイはテスケロサウルス属の有効な種とされた。
テスケロサウルス・ネグレクトゥスの模式標本(ホロタイプUSNM 7757、そしてパラタイプUSNM 7758)には従来頭骨要素が含まれていないとされていたが、USNM 7758の「破片」の中から頭骨の一部が発見され、頭骨を含む他のテスケロサウルス(ブゲナサウラの参照標本だったものを含む)との比較が初めて可能になった。恐ろしいことに、既知の「頭骨を含むテスケロサウルス(比較可能だったもののみ)」はいずれもUSNM 7758とは異なっており、(それぞれ)新種である可能性が浮上した。が、いかんせん比較できる部位がわずかということもあり、あくまでも「テスケロサウルスの一種」にとどめられている。
フレンチマンFrenchman層から発見されたRSM P 1225.1は新たにT.アシニボイエンシスT. assiniboiensisとして独立した。頭骨の独自の特徴のほか、体骨格にはパークソサウルスParksosaurusに近い部分もみられたのである。(なお、T.エドモントネンシスとされていたCMN 8537の体部にもところどころT.アシニボイエンシスに近い部分がみられるという。現在ではT. sp.とされているCMN 8537であるが、復活もありうるようだ)
CMN 8537やブゲナサウラの参照標本だった一連の化石は、現在有効とされている3種のテスケロサウルスとは異なるものの可能性があるようだ(NCSM 15728はひょっとするとT.ガーバニイかもしれないが、それを確認する手立てはない)。
ひょっとするとテスケロサウルス属は6種(あるいはそれ以上)にまで増加する可能性があり、今後の研究が非常に楽しみである。あるいは性差や成長段階の差である可能性もあるが、いずれにしても興味深いところである。
■追記■
Boyd, 2014にてNCSM 15728は結局T.ネグレクトゥスとされている。