さて、筆者が(かつての)本業のライフワークとしていた某上部白亜系の小露出だが、ここでは以前からバキュリテス(言わずもがなの棒状異常巻アンモナイト)がわりあい多産する。が、実のところ自信をもってバキュリテス(ユーバキュリテスということはないだろう)と言い切れるものは案外少なく、なんらかのゆるいテーパーの付いた棒/棘状の(ゆるくカーブしていることがないわけでもない)化石はとりあえずバキュリテスとされがちである。
ご多分に漏れずバキュリテスはこの地層でも密集産状を示しがちなのだが、その中に“バキュリテス・レックス”とされる30cmほどの化石がふたつ、ほぼ平行に並んで産出した例がある。これは(いかんせん死ぬほどもろいので)母岩から取り出されることは今日までなかったのだが、一方で最近になって母岩をいくらか削ってやるとやたら薄い骨質――炭酸カルシウムのなれの果てではない――の壁がいくつも現れた。上部白亜系の上部からディプロドクス上科の報告はちらほらあるわけだが、どうもこの化石もそれであるようだ。ごく最近になって、「例の」層準からよく関節した上半身が出ていたりもするのだが、これはほぼ間違いなく同じ種のものだろう。